ドイツ税務のアップデート2024年3月

1. 不動産譲渡税に関する不確実性の解消

2. 株主である取締役は社用車の私的利用が前提とされる

3.雇用主からの食事提供に関する2024年度の非現金給付額の決定

4. 両親手当(Elterngeld)の所得制限の引き下げ

連邦財務省

  1. 不動産譲渡税に関する不確実性の解消

 パートナーシップ法の近代化に関する法律(MopeG)により、2024年1月1日にパートナーシップ法が改正されました。これにより、不動産譲渡税に関する不確実性が生じましたが、第二次信用市場促進法によりその不確実性は解消されています。

背景

 2024年から施行されるMoPeGにより、民法上のパートナーシップやその他のパートナーシップに関する法律が大幅に改正され、法人の場合と同様、2024年1月1日以降は、パートナーシップと株主との間で資産分離が厳格化されることとなります。

要点

 MoPeGは不動産譲渡税にも影響を与えています。成長機会法によって、不動産譲渡税法上のパートナーシップと法人の取り扱いが異なるという問題(特に不動産譲渡税法(GrEStG)第5条および第6条に基づく税制上の優遇措置の分野)は解決されることが期待されていました。すなわち、不動産譲渡税に関しては、パートナーシップは引き続き共同所有として取り扱われることが想定されていたのです。

 これにより、連邦政府と各州が不動産譲渡税法の改正について協議する時間が確保されました。しかし、ここで問題が発生します。連邦審議会が2023年11月に成長機会法を停止したのです。調停委員会が招集されましたが、2023年度中に合意に達することができなかったため、2024年1月1日以降は不動産譲渡税が課税されるという最悪のシナリオが想定されていました。最終的には、第二次信用市場促進法において、必要な調整がなされたため、このような事態に至ることはなかったのです。

 したがって、パートナーシップに係る不動産譲渡税の取り扱いについては当面は変更されないこととなりました。例えば、個人事業主である息子が法人化し、将来父親とパートナーシップを形成したとしても、この譲渡プロセスが事業用不動産の不動産譲渡税を誘発することはないということです。

 立法者が、当初予定していた経過措置期間を1年から3年に延長したことは喜ばしいことであり、その結果、少なくとも2026年末までは不動産譲渡税の優遇措置が適用されることになります。

補足

 第二次信用市場促進法によってさらに2つの成長機会法による時限的な規制が実施されています。

・特に税務当局の事務負担を軽減するために、いわゆる2022年12月のガス・地域暖房補助金に対する課税が免除されました。その結果、所得税法(EStG)第123条から第126条は削除されています。

・加えて、利子バリア規制の調整が行われています。これは、利子控除規制(EStG第4h条および法人税法第8a条)を2023年12月31日までにATAD(租税回避防止指令)の要件に適合させなければならなかったためです。

  1. 株主である取締役は社用車の私的利用が前提とされる

雇用主が双方の利益のために従業員に何か良いことをしたいと考えた場合、様々な選択肢があります。例えば、ガソリンクーポンの付与や、社用車の提供などが考えられます。原則として、会社の取締役も従業員であるため、他の社員と同様に、自宅と勤務地間の移動のためだけに社用車を提供することもできれば、休暇などのプライベートな移動のために社用車の利用を許可することもできます。社用車の私的使用が禁止されている場合、社用車の私的利用を非現金給付と見做された場合に負担する所得税の支払義務はありません。しかしながら、これは個人株主の社長にも適用されるのでしょうか?

ミュンスター財務裁判所(FG)にこの判断が求められました。原告であるGmbHは、唯一の取締役であるA氏にミドルクラス以上のランクの社用車を貸与することに同意していました。しかし、社用車の私的利用は認めていませんでした。GmbHは、新たに取得した社用車は私的利用が認めらていないため特別償却の対象として税務申告していました。しかしながら、税務署は、私的使用の割合(所謂1%ルール)を適用し、社用車の私的利用が推定され、完全に事業目的にのみ社用車が使用されているとは言えないとして、特別償却を否認しました。結果的に租税裁判所への提訴は不成立となったのです。

一般的に考えれば、株主である取締役は会社から貸与された社用車を私的利用していると思われるのが通常です。これは、私的利用を排除する会社としての措置がとられていない場合に単に私的利用の禁止がうたわれている場合にも当てはまるとされています。

今回の判決は、私的利用が契約上禁止されている場合には私的利用は想定されないとする従来の判例に従わないものでした。一見私的利用が禁止されている場合であっても、利益相反がないため、会社法や労働法上は社用車をプライベートで利用しても、Aには何の不利益も生じないということが根拠となっています。

  1. 雇用主からの食事提供に関する2024年度の非現金給付額の決定

昼休みに社員食堂で無料もしくは割引価格での食事の提供を受けることは従業員にとって有難いことです。しかし、このような現物給付は非課税ではなく、非現金給付として認識され、所得税と社会保険料の対象として給与に加算されます。

連邦財務省は、このような食事提供に関して、2024年に適用される非現金給付額を公表しました。非現金給付額の公表は給与計算の簡素化を目的としています。雇用主は食費提供に関する実費額を算定する必要はなく、当該非現金給付額を基礎とすることができます。また、これらの非現金給付額は、業務関連の社外活動中や共働きの家庭で、雇用主や第三者が従業員に提供する食事にも適用され、食事代が60ユーロを超えないことが条件となります。

2024年度においては、朝食は2.17ユーロ(2023年:2ユーロ)、昼食および夕食は1日あたりそれぞれ4.13ユーロ(2023年:3.80ユーロ)に設定されました。3食付きの場合は1日当たり一律10.43ユーロ(2023年:9.60ユーロ)が適用されます。

従業員に無料で食事が提供される場合、上記の非現金給付額は非現金給付として給与勘定に計上されます。従業員が社員食堂で3ユーロなどの割引価格で昼食をとった場合、非現金給付額と食事代金の差額(2024年では1.13ユーロ)は、従業員の非現金給与として認識されることになります。従業員が食事代として4.13ユーロ以上を支払わなければならない場合、非現金給付額はゼロとなります。

通常、非現金給付額は食事の実費額よりも低いため、雇用主は従業員に毎日の食事を提供することで、人件費を節約することができます。仮に食事費用を賃金として支払うとすれば、より多くの費用負担となるため、このような手当は、従業員にとっても雇用主にとってもメリットがあるといます。

  1. 両親手当(Elterngeld)の所得制限の引き下げ

2024年予算財政法において、両親手当(Elterngeld)の交付を請求できる所得制限額が引き下げられました。家族・高齢者・女性・若者連邦省(BMFSFJ)は、所得制限に関する規定の見直しを以下のようにまとめています。

2024年4月1日以降の出生について、両親手当の受給者が手当を受けられなくなる課税年収の上限(所得制限)は、300,000ユーロから200,000ユーロに引き下げられます。

2025年4月1日からは、両親手当について175,000ユーロにさらに引き下げられます。なお、片親の場合は、2024年4月1日から150,000ユーロの所得制限が適用されます。

さらに、両親手当の同時受給の可能性についても見直しが行われています。今後、基本両親手当(Basiselterngeld)を受給できるのは、子どもが生後12ヶ月目までとなります。

両親手当プラス(Elterngeld Plus)、パートナーシップ・ボーナス(Partnerschaftsbonus)の同時受給、多胎・早産の場合は例外となります。

注:両親手当に関する詳細情報(両親手当の金額計算含む)は、家族・高齢者・女性・若者連邦省のウェブサイト(BMFSFJ – Startseite)をご参照ください。


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