[Japanese text only]
過去の事例を言うまでもなく、不正が発覚すると、企業の業績だけでなく評判にあたえるダメージも大きく、例えば、不正の発覚により取引先から取引が縮小・停止されたり、人の採用が難しくなる、最悪の場合には会社の存続の危機を迎えます。こういった事態を回避するためには、積極的に不正を抑止することが重要です。
不正の抑止のために特に大切なことは、普段から不正の兆候に注意を払うことです。
不正の兆候を平たく言うと、「歪み」です。不正というのは、人為的に行われるので、必ず隠ぺい行為を伴います。この隠ぺい行為が行われることで通常とは異なる状況が現れます。この通常とは異なる状況(=歪み)が不正の兆候です。
この不正の兆候は、大別して3つ、1.数値に表れるもの、2.書類に表れるもの、3.行動・態度に表れるものに分けられます。
- 数値に現れる兆候
数値に現れる兆候の例としては、以下のものがあります
- 業界の状況と乖離した売上の急激な伸び
- 同じ業界の他社と比べて、高い利益率・低い利益率
- 売上債権残高の急激な増加
- 書類に現れる兆候
書類に現れる兆候の例として、以下のものがあります。
- 書類の紛失、コピーのみ保存
- 書類の改ざん
- 行動・態度に現れる兆候
行動・態度に現れる兆候には、以下のものがあります
- 収入に比べて生活が派手
- 他人の悪口をよく言う
- 書類の作成・提出が遅れる
- 明らかに非効率なやり方で仕事をしている
- 最近、性格や勤務態度が変わった
- 聞かれたことに対して、的外れな説明・回答をする
- 聞かれたことに対して、必要以上に多く説明する
- 金に困っている
- 取引先と不自然に親密
- 欠勤
- 一人で残業・休日出勤をする
- 有給休暇を取らない
特に日本で見過ごされやすいのは、3の(k)一人で残業・休日出勤をする、(l)有給休暇を取らない、です。
というのも、日本企業では(伝統的な大企業だけでなく例えスタートアップであっても)、個人よりも会社組織を優先する生き方が称賛されやすいという風土があるので、その表れとみなされやすい長時間労働が、不正の兆候に一番気づきやすい周りの人間から好意的にみられてしまうという背景があるからです。
過去の不正事例を見ますと、不正の兆候が表れているにもかかわらず見過ごされる、もしくは認識されていても何ら対応がなされず、結果として損失が拡大したケースがあります。
普段の業務で「違和感」を感じることがある場合には、どんな些細なことでもそのままにせず、自社もしくは外部の専門家により調査し、不正が発生しているか否かを確かめることが大事です。