Transfer Pricing Seminar for Medium-sized corporations in Japan (Japanese Text Only)

(This is the 10th article of this seminar series composed of 11 articles)

(第10回)比較対象法人の選定と利益率レンジの策定

(Part 10) Selection of the comparable companies and calculation of the profitability range

 

 

比較対象法人の選定は、移転価格の実務の中ではコアな部分の1つであるとともに非常にテクニカルな部分です。以下では、実務において企業データベースを利用して一般的に行われている標準的な比較対象法人の選定方法について説明します。

 

1.比較対象法人の選定手順

企業データベースを利用した比較対象法人の選定は、概要次の手順で行います。

  • 市場(国又は地域)、業種等で絞り込んで比較対象候補法人(50~100社程度)を抽出します。
  • 比較対象候補法人の財務データを(データベースから)入手します。
  • 定量的基準及び定性的基準(後述)を用いてスクリーニングします。
  • 一定の比較対象法人(5~15社程度)を抽出します。

    [企業データベース]
    移転価格実務では次の企業データベースが一般的に利用されています。

  • スタンダード&プアーズ社提供のコンピュスタット(Compustat)
  • ビューロー・ヴァン・ダイク社の提供オービス(Orbis)

    今後利用されるかもしれない企業データベースとして次のものが考えられます。

  • 検証対象法人の所在地国の商工会議所等が提供するローカルな企業データベース

 

2.スクリーニング-定量的基準-

一般的には次のような定量的基準によりスクリーニングします。

  • 財務データの十分性

比較可能性を担保するためには、統計上、財務データの十分性を確保する必要があります。基本は過去5事業年度(場合によっては過去3事業年度)の財務データがある法人を抽出します。

  • 利益の十分性

営業利益がマイナスになっている事業年度がある場合は、独立企業間価格に何等かの問題が生じている可能性があるため除外します。

  • 法人規模の妥当性

比較可能性を担保するためには、売上、資産、従業員数等の規模が類似する法人を選定するのがベターです。国内法の過大役員報酬の判定における同業類似法人の基準等ではいわゆる「倍半基準」が用いられますが、移転価格の場合、一定の比較対象候補法人を確保できない場合には、最大10倍、10分の1程度まで緩和することを許容しています。

  • 研究開発費等割合の基準

売上に対する研究開発費割合が高い法人は、無形資産を保有し、これが利益に影響している可能性が高く、比較可能性を担保できないとされています。

  • 輸出売上割合の基準

販売市場による影響を排除するため、輸出売上割合が高い法人は除外します。

 

3.スクリーニング-定性的基準-

定量的基準によってある程度比較対象候補法人(20社~40社程度)が絞り込まれたら、データベースに掲載されている企業情報に加え、企業のホームページ、有価証券報告書、IR情報等を利用して、一般的には次のような定性的基準によりスクリーニングします。

  • 企業情報の十分性

定性的基準を判断できるだけの企業情報が得られる必要があります。

  • 製品・商品・サービスの類似性

利益率が大きく異なるような製品等である場合は除外します。

  • 取引段階の類似性

卸売か小売か、店舗販売かネット販売かで利益率が異なるため、取引段階が類似する法人を抽出します。

  • 機能の類似性

例えば、製造であっても、自らリスクをとって製造する法人を選定するのか、自らはリスクをとらない受託製造する法人を選定するのか、という判定をします。

  • 事業戦略の類似性

例えば、市場シェアの獲得を目指して低価格戦略を採っているのか、多額の広告宣伝費を投入して市場認知度を高めるブランド戦略を採っているのか、という判定をします。

  • 独立性の基準

比較対象法人における関連者取引の影響を排除するため、例えば持株割合が50%以上の親会社又は子会社がある法人を除外します。

 

4.利益率レンジの設定

現在、最も多く利用されている独立企業間価格の算定方法は、取引単位営業利益法(TNMM)です。この方法は、基本3法と異なり、製品等の類似性よりも取引当事者の機能の類似性を重視する(製品等の類似性をやや犠牲にする)ことにより、企業データベースを利用してより多くの比較対象候補法人の中から比較対象法人を選定することから、利益率レンジの設定の場面においては、統計学的に精度を高めるため、総データの第1四分位と第3四分位の間の幅をレンジとする四分位範囲(Interquartile Range)を採用するのが一般的です。

次の表は、選定された比較対象法人が5社の場合と6社の場合における四分位範囲の計算例です。基礎となるデータは比較対象法人の過去5事業年度(過去3事業年度)の売上高営業利益率の加重平均値です。

  • データ数が5の場合

比較対象法人

営業利益率

(加重平均)

 

四分位法

営業利益率

A社

3.5%

 

最小値

3.5%

B社

4.0%

 

四分位25%

4.0%

C社

4.5%

 

中央値

4.5%

D社

5.0%

 

四分位75%

5.0%

E社

5.5%

 

最大値

5.5%

第1四分位数=(3×1+1×5(データ個数)/(1+3)=2(2番目のデータ)

第2四分位数=(2×1+2×5(データ個数)/(2+2)=3(3番目のデータ)

第3四分位数=(1×1+3×5(データ個数)/(3+1)=4(4番目のデータ)

四分位範囲

4.0% ~ 5.0%

 

  • データ数が6の場合

比較対象法人

営業利益率

(加重平均)

 

四分位法

営業利益率

F社

3.5%

 

最小値

3.5%

G社

4.0%

 

四分位25%

4.125%

H社

4.5%

 

中央値

4.75%

I社

5.0%

 

四分位75%

5.375%

J社

5.5%

 

最大値

6.0%

K社

6.0%

 

 

 

第1四分位数=(3×1+1×6(データ個数)/(1+3)=2.25(2.25番目のデータ)

第2四分位数=(2×1+2×6(データ個数)/(2+2)=3.5(3.5番目のデータ)

第3四分位数=(1×1+3×6(データ個数)/(3+1)=4.75(4.75番目のデータ)

四分位範囲

4.125% ~ 5.375%

 

以上

 

(The next article of this ‘Transfer Pricing Seminar Series for Medium-sized Corporations in Japan’ shall be published next month.

For further inquiries, please contact us at Japan@HLS-Global.jp.

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