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New invoice system in japan 2023

移転価格税制ワンポイントアドバイス為替変動と移転価格リスクの関係

  1. はじめに

移転価格課税リスクを管理するにあたって、独立企業間価格の算定方法にTNMMを選定し、海外子会社の利益率が移転価格税制上妥当な水準であるかを気にかけている企業は多いことと思います。昨今の円安ドル高が続く状況では、特に対米取引について、米国子会社の利益率管理に苦慮している企業様も多いのではないでしょうか。この記事では、為替変動が移転価格に及ぼす影響を解説していきます。

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米国輸出規制について 前編:米国輸出規則の概要

昨今、経済安全保障問題について活発に報道されるようになり、「輸出規制」という言葉が身近に聞かれるようになりました。輸出規則というと、日系企業にとっては、日本から海外に製品を輸出する際に、日本(自国)の輸出規則の対象となり、あくまでも自国だけの規制と思わている方も多いのではないかと思います。しかし、米国の輸出規則には、「再輸出規則」と呼ばれる制度があり、たとえ日本で製造した製品でも、米国産の製品・部品、ソフトウェア、技術が一定以上含まれている場合や、米国産の技術を使用して製造した製品である場合は、他国へ輸出する際に米国政府の許可が必要になることがあります。このような場合、無許可で製品を輸出してしまい、米国の輸出規則に違反してしまうと、禁固刑や米国製品、技術についての取引が禁止になるといった厳しい罰則があります。日本で製造活動を行っている企業でも、米国産の製品、技術、ソフトウェアを取扱っており、中国、ロシアを含む、米国が規制している国々と取引を行っている場合は、米国の輸出規制に注意する必要があります。

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日本の移転価格税制 「金銭の貸借取引・債務保証取引」改正のポイント(前編)

  1. はじめに

国税庁は2022年6月、「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)の一部改正を発表しました。この改正は2022年1月にOECD移転価格ガイドラインの金融取引に関する指針を反映したものと考えられ、金融取引と費用分担契約に関する取扱いについて、指針の内容を一部改正しました。米国で活動する日系企業にも影響すると思われますので、ご留意ください。

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移転価格税制のワンポイントアドバイス

移転価格税制とは、国外関連者との間のクロスボーダー取引に関わる価格を「独立企業原則」に基づき設定し、各国で適正な納税を義務付けるための制度です。例えば、日本の親会社で開発・製造した製品を、米国の子会社が仕入れ、それを米国市場で販売する取引は、米国子会社が日本の親会社から仕入する製品が関連者間で行われる取引であり、この取引価格を恣意的に決めてしまうことも可能です。この場合、日本の親会社から米国の子会社への販売価格が低すぎれば、この取引に帰属する所得は、日本の親会社から米国の子会社に移転してしまい、この結果、日本において申告する所得が過小になり、逆に米国で申告する所得が過大になってしまいます。日本での申告所得が過小になるわけですから、税務調査でこの問題が指摘されれば、国税局に正しい価格に基づき、所得を引き直され、追加納税を課せられ、二重課税問題が生じます。このように、国外関連者間におけるクロスボーダー取引において、各国での申告所得の不均衡を防止するために、移転価格税制が設けられています。移転価格税制の基礎は「独立企業原則」にあり、この原則は、国外関連者間の取引においても、非関連者と同様の条件で価格設定を行い、取引を行うことをいいます。今日では、移転価格税制は、ほぼ全ての国に導入されており、厳格に運営されています。海外進出する企業においては、ぜひ、ご留意いただきたい国際課税分野の一つです。

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Transfer Pricing in Japan - An Overview Hero Image

日本における移転価格-概要

移転価格は、多国籍企業グループ(Multinational Enterprise Group)内での取引の条件や価格を決定するための、国際税務・会計の一分野です。その結果、異なる国や地域の税務管轄にまたがる関連会社に利益が配分されることになります。

独立企業間価格の設定においては、商品は購入者または販売者による価格操作や価格の歪みがないように市場価格で評価され、独立企業原則(アームズ・レングス)に基づき価格設定されます。

移転価格のメカニズムを利用することで、国外関連者に配分し合法的に税負担を低税率の国や地域に移転することが可能ですが、実際に移転価格を決定する際には、いくつか留意しなければならない重要な点があります。

ここでは、移転価格とは何か、また日本でビジネスを展開する企業にとって広範囲に影響を及ぼす可能性のある、日本における移転価格税制の概要をご紹介します。

移転価格税制は、独立企業間の取引価格(独立企業間価格)では起こりえないような、国外関連者間の取引を通じた所得の海外移転を防止するために導入されていま

BEPSと国際的な租税回避への取組み

経済協力開発機構(OECD / Organization for Economic Cooperation and Development は、主要国を中心に税源浸食と利益移転(BEPS / Base Erosion and Profit Shifting)および世界的な脱税の阻止を目的として、、多国籍企業向けの移転価格ガイドラインを作成しました。

BEPSとは、各国税制の相違点や不整合を利用して、利益を低課税地域または租税回避地に人為的に移転する課税逃れのことをを指します。これは利子やロイヤリティーなどの控除可能な支払いを通じて税源を侵食するとして不当なものとと見なされます。

日本と他の国と地域は、OECDと協力して、国際税務をとりまく環境の一貫性と透明性を向上させるため、移転価格ガイドラインを含む、租税回避に取り組むための15項目の「BEPS行動計画」により調整を図っています。

OECDの加盟国には、米国、カナダ、メキシコ、日本、韓国、オーストラリア、およびヨーロッパ諸国の大半が含まれます。これらの国のすべての多国籍企業グループは、適切な独立企業間価格の算定を行い、活動に関する正確な報告書を作成することが求められます。

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独立企業原則とは

Business meeting of colleagues calculating arm’s length method and transfer pricing in Japan

日本における移転価格税制及びその施行方法は、OECD基準にほぼ準拠しています。すなわち「独立企業原則」を採用し、OECD / G20 BEPSに関する包括的枠組みに定められた主要な措置が実施されています。

独立企業原則では、取引関係にある当事者間の独立性や、競争を行う際の諸条件を平等にする条件が実現していることが前提になります。これは国際税務の重要な原則であり、これにより異なるくにや地域間で利益を適切に配分することができます。

したがって、国外関連者間の取引は、独立企業間価格と同等に設定された価格である必要があります。

国外関連取引には、国外関係者との間の資産(有形資産・無形資産)の売買・サービスの提供・その他取引が該当します。

国外関連者とは、親子関係や実質的な支配関係など、特殊の関係にある事業体です。

独立企業間価格の算定方法

独立企業間価格の算定には、移転価格税制で定められた方法が多く存在します。個別の状況に基づいて、最適なアプローチを決定する必要があります。具体的な算定方法として以下のようなものが挙げられます。

  • 利益分割法(PS法/ Profit split method )
  • 取引単位営業利益法(TNMM/ Transactional net margin method)
  • 独立価格比準法(CUP法/ Comparable uncontrolled price method )
  • 再販売価格基準法 (RP法/ Resale price method )
  • 原価基準法 (CP法/ Cost plus method)
  • Berry Ratio method

移転価格APA(Advance Pricing Agreement / 事前確認)の取得

移転価格APAを利用して、独立企業間価格の算定について税務当局と事前に合意を得ることが可能です。複雑なプロセスと文書作成が必要ですが、ひとたび完了すると日本の税務当局から移転価格についての合意を事前に得ることができます。

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移転価格対応の実例

Business partners discussing transfer pricing in Japan example

ある会社の親会社または子会社(A社)が高税率国に存在する場合、低税率国に存在する別の子会社(B社)により多くの所得を配分することで節税しようとします。

A社がB社に低価格で商品を販売することにより、低税率国に存在するB社の課税所得が大きくなります。その結果、A社での納税負担が減り、会社にとってより多くの所得の確保につながります。

したがって、関連者間の販売価格を独立企業間価格(市場価格)と別の価格に設定することにより、親会社は納税額及び利益を操作することができます。

上記のように企業が移転価格を操作し、租税を回避して企業全体の利益を増やすと同時に、当局の税源を減少させるという事態を防ぐため、税務当局は、独立企業原則に基づいた厳格な規則を定めています。

高税率国に子会社が存在する場合、低税率国に存在する別の子会社により多くの所得を配分することで節税が可能です。

不適切な移転価格に対する罰則

日本市場に参入する大規模な多国籍企業にとって、関連社間の各取引における適正な価格を決定するには通常煩雑な手続きが必要となります

移転価格が適正に設定されていない、または財務諸表を含む書類が税務調査によって根拠として不十分とみなされた場合等、会計上の誤りが税法の違反につながり、罰金や罰則が課せられる場合があります。

また、グループ企業が移転価格税制を利用し、人為的な利益移転や租税回避に関与したとみなされた場合、税務当局から罰金を科せられる場合もあります。

日本の移転価格に関する問題にかかる税務訴訟では、膨大な費用と複雑な手続きが必要です。行政の準司法機関(国税不服審判所)に持ち込まれ、その後裁判所に持ち込まれる可能性があります。

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専門家のアドバイスを受ける

日本企業とその国外関連者との間の取引は、常に移転価格税制の対象となる可能性があるため十分な準備が必要です。

移転価格においては、税制、経済の状況、および会計のプロセスを深く理解している必要があります。したがって企業は、それらの分野に精通している専任のアドバイサーまたは税理士によるアドバイスを受けながら関連者間取引をしっかりと把握しておくことが賢明です。

HLSグローバルでは、移転価格および国際税務会計を効率的に対策し、日本市場に参入する多くの欧米企業を含む国際企業がこのようなハードルを克服するのを支援してきました。

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最後に

key takeaways for transfer pricing in Japan

複数の国や地域にまたがって事業を営む企業は、異なる複数の法律や規制を遵守する必要があります。しかしながらそれらを考慮しても、多様な資源・商品・人材にアクセスできるため、複数の国や地域に事業を展開する利点はあります。

これらを最大限に活用するには、どのようにして移転価格と国際取引を効率的かつ戦略的に確立していくかを理解することが重要です。

日本で成功している多国籍グループ企業各社が採用する国際ビジネス戦略と税務手続き、または組織が複数の国や地域でスムーズに運営できる施策について詳しく知りたい場合、下記よりご連絡下さい。経験と専門知識豊富なHLSのエキスパートが国境を超えた税務をサポートいたします。

「国際税務セミナー」を開催

この度、2019年9月27日(東京)と10月30日(カリフォルニア)にて、米国に子会社を有する日本企業様、あるいは今後米国への進出を検討する日本企業様を対象に、税理士法人HLSグローバルとHotta Liesenberg Saito LLP の主催による「国際税務セミナー」を開催いたしました。当日は、日・米の国際税務の専門家が、「タックスヘイブン税制に係る令和元年度改正」、「移転価格文書化導入後の移転価格調査」及び「米中貿易摩擦についての関税及び移転価格対策」について解説しました。

 

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