Articles

ドイツ税務のアップデート2025年9月

  1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期
  2. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限
  3. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正
  4. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

  1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期

単独または支配的な立場にある株主は、自身の会社に対する債権が支払期日に到達した時点で、たとえ実際に支払われていなくても、その債権を受け取ったものとみなされます。これは、支配株主であれば通常、自分に対する支払いのタイミングを自ら決定できる立場にあるためです。

事案の概要


本事案では、有限会社(GmbH)の支配株主が、会社の経済的困難により実際には支払いを受けていないにもかかわらず、会社に対する支払期日到来済の債権を「受領した」とみなすことができるかどうかが争点となりました。

判決の内容

財務裁判所(FG)は、支配株主は、会社に対する債権が支払期日を迎えた時点で既に受領したものとみなされると判断しました。この「みなし受領」の原則は、少なくとも債権が明確で、争いがなく、支払期日を迎えており、かつ支払能力のある会社に対するものである場合には適用されます。

この場合の「会社の支払不能」とは、資金不足に基づく恒常的な金銭債務の履行不能状態のみを指します。通常、会社が「崩壊」する前、すなわち破産手続開始の申立てがされていない限りは、支払不能とは認められません。

たとえ会社が経済的困難に直面していたとしても、支配株主が劣後条項付きの金銭貸付けを行い、合意された利息が会社の会計上は負債として計上されている一方で、数年間支払われていない場合でも、その利息は株主に受領されたものとみなされます。

これは、会社が他の債権者に対しての支払い義務を履行しており、破産申立てもされていないような状況であれば適用されます。

また、利息の支払期日は、劣後条項の存在によって変更されるものではありません。劣後条項に、支払期日を遅らせる「支払猶予の合意」が含まれていない限り、利息は当初の契約どおりの期日に支払期日を迎えます。

劣後条項の効力は、破産法上の支払期日(ドイツ破産法 §17(2) 1項)にのみ影響を与えるものであり、民法上の支払期日(BGB §271)とは異なります。

民法上の「支払期日」とは、債権者が支払いを請求できるようになり、債務者が遅れていれば遅延損害金が発生したり、時効が進み始めるタイミングを指します。

一方、破産法上の「支払期日」とは、個別の債権回収から、破産手続などの全体的な債権回収に移行する判断の基準となる時点を意味します。

劣後条項(他の債権者への支払いが優先されるという合意)は、会社が本当に破産状態にある場合に初めて効力を発揮します。それまでは、支払期日そのものや請求権の発生には影響を与えません。

  1. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限

本事案は現金取引の多いスナックバーを経営している納税者に対して税務調査が行われ、納税者の現金管理に不備があると指摘された事案です。

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の財務裁判所(2023年8月28日付、3 K 25/22号。上訴中:連邦財務裁判所BFH X R 27/24)の判断は下記のとおりです。

電子レジの操作が不正に行える可能性があることを考えると、そのレジに関する組織的な資料やプログラム仕様書などが整備されていない場合、それだけで重大な不備と見做されます。このような不備があると、税務当局は納税額を推計で決定することが認められるというのが裁判所の判断です。

また、税務署が定率(標準的な割合)を用いて課税額を算定したことについても、裁判所は妥当だと判断しました。連邦財務裁判所がこの方法に疑問や懸念を示していたとしても、公式な定率表を用いて同業他社と比較する推計手法は、依然として広く認められていると述べられました。

推計に対する異議申し立ては、税務調査の防御における“日常業務”

実務的なアドバイス:

今回の判決は、税務調査に対する納税者へのアドバイスにおいて非常に重要です。税務調査では、税務署による推計の権限や、その根拠となる手法について対処することが、税理士の基本業務の一つとなっています。

上訴審(事件番号X R 19/21)では、連邦財務裁判所(BFH)は、公式な基準に基づく金額の推計には依然として様々な不明確さがあると明確に述べています。このことは、定率による推計が完全に否定されるという意味ではありませんが、推計額を減らせる可能性があることを意味します。

また、直近の2024年10月4日の判決(X B 105/23)では、推計の不確実性を踏まえて、連邦財務裁判所が上訴を認めている事案も出てきています。

  1. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正

連邦参議院は2025年7月11日、「ドイツ経済拠点強化のための投資即時プログラムに関する法律」(取得番号249194)に同意しました。これにより、CO2排出のない自動車(例:純粋な電気自動車や水素車)の税務上の取り扱いが変更されます。具体的には総額リスト価格と減価償却の扱いが変わります。

従業員への貸与に伴う金銭的利益(インカインド)

雇用主が従業員にCO2排出のない社用車を私的利用も認めて貸与した場合、課税対象となる給与として現物給与が発生します。

数年前から以下が認められています:

  • 1%ルールで金銭的利益を算出する際、総額リスト価格(BLP)を4分の1にできる
  • 走行記録簿方式を適用する場合、減価償却費(AfA)やリース料も相応に減額できる

ただし、これには車両の総額リスト価格が一定の限度額を超えないことが条件です。この限度額は近年引き上げられてきました:

  • 2018年12月31日以降の取得:60,000ユーロ
  • 2023年12月31日以降の取得:70,000ユーロ
  • 2025年6月30日以降の取得:100,000ユーロ

限度額を超える場合は、算定基礎として総額リスト価格の半分を用います。引き上げ後の限度額は2025年6月30日以降に取得した車両に初めて適用されます。

特に社用車では、取得時期は「従業員に私的利用目的で初めて貸与された日」とみなされます(財務省通達 2014年6月5日、番号106294)。

例:

  • 雇用主Aが2025年1月1日から従業員BにBLP 98,000ユーロのE-社用車を貸与。
    → この場合、当該日は限度額70,000ユーロを超えているため、算定基礎は半額BLP。

例:

  • 雇用主Aが2025年8月1日から従業員CにBLP 98,000ユーロのE-社用車を初めて貸与。この車両は2025年6月に購入され、プール車として業務専用で使用されていた。
    → この場合は、2025年7月1日から限度額が100,000ユーロに引き上げられているため、算定基礎は4分の1BLPでよい。

なお、付随する消費税(付加価値税)に関しては、E-車両であっても常に満額のBLPが基礎となります。

E-車両に対する減価償却の優遇

さらに、立法者は所得税法(EStG)第7条第2a項に、CO2排出のない電気自動車に対する追加の償却制度を導入しました。対象は2025年7月1日から2027年12月31日までに新規取得した車両です(中古車は対象外)。

対象車両については以下の算術的・逓減法による特別償却が可能です:

  • 取得年:75%
  • 翌年:10%
  • 2年後:5%
  • 3年後:5%
  • 4年後:3%
  • 5年後:2%

この新しい償却制度は2025年以降、車種(乗用車、電動商用車、トラック、バスなど)を問わず適用されます。目的は、企業や事業主にCO2排出ゼロ車両の導入を促すことです。

一方で、従業員がこの特別償却を享受することはできません。従業員が走行記録簿方式で私的利用分を算出する場合や「コスト上限」が適用される場合に減価償却は関連しますが、その場合も現行通達では耐用年数8年間での定額(線形)償却とされ、雇用主が認められる特別償却は考慮されません。

補足:

従業員が自家用車で出張した場合に、実際の車両コストを経費として申告したり、雇用主が実費を非課税で精算する場合でも、コスト(減価償却を含む)は耐用年数に応じて期間配分する必要があります(連邦税務裁判所判決 2015年9月3日、VI R 27/14)。

  1. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

業務関係をどのように具体的に構築するかは多様であり、実務上それを「雇用」か「自営業」かに明確に分類するのはしばしば困難です。そのため、社会保険料の追徴課税(加算金付き)を避けるには、早めに慎重かつ的確な判断が求められます。

背景

建設業では昔から偽装自営業が知られていましたが、最近では旅行添乗員、清掃員、フィットネストレーナー、介護士、出版社、運送業、IT業界でも増加しており、「発注者」は保険料を支払っていません。追徴金や利息、労働保護に関する訴訟のリスクがあるため、発注者は早めに就労形態を確認する必要があります。

発注者・受注者の双方にとって、自営業か雇用関係かの区別は必ずしも明確ではありません。特に問題となるのは、社会保険法・税法・労働法における判断基準が一致していないことです。

まず「本物の」自営業者とは、複数の顧客を持ち、どの仕事をどの条件で引き受けるかを自分で決め、いつ・どこで・どのように働くかも自由に決められる人です。多くの場合、自分のオフィスや設備を持っています。

一方で「本物の」従業員は、雇用契約に基づき、雇用主の指示に従って労働時間や労働力を提供する義務を負います。特に勤務時間、勤務地、業務遂行の条件について雇用主の指揮命令を受けます。

留意点: 

この「両極」の間には広いグレーゾーンがあり、年金保険の調査官や社会裁判所の裁判官は、全体的な状況を見て判断します。焦点となるのは「事業上の意思決定の自由」と「事業リスク」です。

判断基準 :

個々のケースでは総合的な事情が重要ですが、典型的には次の点が判断基準となります:

  • 指揮命令従属性:発注者が業務の時間、場所、内容を具体的に指示しているか?
  • 組織への組み込み:受注者は発注者の資源を利用しているのか、自前の資源を使っているのか?また発注者の組織にどの程度組み込まれているか?
  • 事業リスク:受注者自身が経済的リスクを負っているか?

留意点: 

特に、受注者が従業員と同じ業務を行っている場合、あるいは以前に従業員として同じ会社で働いていた場合には、裁判所は偽装自営業と判断しやすくなります。加えて、受注者が自分自身で従業員を雇っていない場合は、偽装とみなされる可能性がさらに高まります。

要点: 

契約は形式的に正しく整備すべきですが、偽装自営業かどうかは契約書の名称ではなく、その実際の運用に基づいて判断されます。

偽装自営業の結果

最大の問題は社会保険料の負担義務であり、発注者にとって深刻な結果をもたらします。原則として「就労開始時」から適用され、後から判明した場合でも遡及します。これにより、多額の追徴金や延滞金、さらには刑事罰につながる可能性があります。

身分確認

被用者か自営業者かの法的確実性を得られるのは、**身分確認手続(SGB IV §7a)**だけです。これは発注者・受注者のいずれからでも申請可能です。

実務上のヒント: 

契約開始時だけでなく、長期的な業務関係においても状況が変化する可能性があるため、定期的に法的に見直すことが重要です。

免責事項:当サイトに掲載された情報は情報提供のみを目的としたものであり、その内容について何ら法的保証をするものではありません。この情報はあくまで参考であり、適用される法律の改正や変更があった場合には変更される事になります。出来る限り正確な情報の掲載に努めて参りますが、必ずしも安全性・信頼性・正確性などを保証するものではなく、本記事の省略および誤りにより引き起こされる損害等について、当社は一切の責任を負いかねます

防衛特別法人税の導入について

令和7年3月に公布された「所得税法等の一部を改正する法律」により防衛特別法人税が創設されました。これにより、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、この税の納税義務者となり、防衛特別法人税に関する確定申告書の提出が必要となります(防衛特別法人税額がゼロであっても申告は必要となります)。

(さらに…)

ドイツ税務のアップデート2024年5月

  1. アーンアウト(Earn Out)対価の受取時課税
  2. 隠れた準備金の取り崩し(6%の利益割増率は適法)
  3. 短期雇用従業員の労働に関する社会保険免除
  4. 社用車の電子走行記録(ログブック)に関する変更履歴
  5. 求職費用の所得控除

(さらに…)

米国税務アップデート:IRSが税務調査の件数増加を発表。

今月2日(5月2日)に、IRSが、将来の戦略的運営計画(「SOP」Strategic Operation Planの略)を公表し、この計画の中で、税制の執行強化については、税務調査件数の大幅増加を目標にしていることが明らかにされました。

 背景としては、2022年8月に、クリーンエネルギーへの投資、財政赤字の削減等を目的とするInflation Reduction Act(「IRA」)が米国議会で可決され、この法律の中で、税制の執行強化による歳入拡大を目的として、IRSに総額800億ドルの追加予算が割り当てられました。具体的には、IRSの近代化によるサービスの向上や税務調査の強化による歳入拡大が主な内容です。その後、2023年6月に、共和党と民主党の財政赤字削減の交渉により、IRSへの追加予算の内、200億ドルが削減されました。それでも継続して予算が削減されてきたIRSにとっては、今回の予算は大幅引き上げとなりました。様々な課題を指摘されてきたIRSにとっては、SOPは大きな改革へのステップとして注目されています。

 2日に発表されたSOPでは主に5つの主要な目標が掲げられています。

  1. 納税者が納税義務を果たし、また、税制優遇を受けられるようにサービスを劇的に改善する。
  2. 納税者の問題を迅速に解決できるようにする。
  3. 複雑な税務申告や高額所得者の納税不遵守等のTax Gap(税金未納問題)に対して、集中的に税制執行を強化する。
  4. 効率的な運営をするために最新テクノロジーを導入する。
  5. 納税者に質の高いサービスを提供するために優秀で多様性のある人材の勧誘や確保を行う。

上記の主要な目標に向けて様々なエリアで、改善の取り組みを行う予定です。また、SOPでは、高額個人納税者、大企業、大規模且つ複雑なパートナーシップ等の税務調査の強化を目標にしていることも述べられています。

  • 高額個人納税者:

1,000万ドル(10ミリオンドル)を超える高額個人納税者に対する税務調査率を2019年度の11%から2026年度には16.5%へ、50%以上引き上げる。

  • 法人:

資産額が 2億5千万ドル(250ミリオンドル)を超える法人の税務調査率を2019年度の8.8%から2026年度には22.6%へ、3倍に引き上げる。

  • パートナーシップ:

資産額が1千万ドル(10ミリオンドル)を超える大規模且つ複雑なパートナーシップの税務調査率を2019年度の0.1%から2026年度には1%へ、10倍に引き上げる。

 

なお、40万ドル未満の所得の小規模企業、個人納税者については、税務調査率の引き上げは行わないと、されています。

 ただし、今回発表された税務調査の件数増加についての計画ですが、件数の他に、税務調査の「質」の面についても、今後着目して行く必要があるかと思われます。IRSはzero adjustmentという問題を抱えています。Zero adjustmentとは税務調査で、修正や更正金額が無く、ゼロで完了することを意味しています。日本の税務調査では、修正金額や更正金額がゼロで終わることはなかなかありませんが、米国の税務調査では、Zero adjustment が常態化しています。2019年度には、資産が1千万ドルを超える企業の税務調査でZero adjustmentで完了する割合が38%と言われており、この割合は2010年度の28%から増加傾向にあります。この問題の一因には、米国の税制が複雑化され一般の調査官にとって難解になる一方、納税者側はその分、準備やコンプライアンスに注力してきたため、両サイドに格差が広がったことが考えられます。

 今回、追加予算を割り当てられたIRSですが、税制の複雑化に伴う調査能力の維持、経験豊富な調査官の世代交代、引き続きひっ迫している米国労働市場での人材確保等、様々な課題を抱えており、その改革は容易ではないと思えます。IRSの改革や税務調査の行方に、今後も注目して行きたいと思います。


免責事項:当サイトに掲載された情報は情報提供のみを目的としたものであり、その内容について何ら法的保証をするものではありません。この情報はあくまで参考であり、適用される法律の改正や変更があった場合には変更される事になります。出来る限り正確な情報の掲載に努めて参りますが、必ずしも安全性・信頼性・正確性などを保証するものではなく、本記事の省略および誤りにより引き起こされる損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。

宝くじの当選金に対する税金の計算

米国の宝くじですが、米国では日本と違い当選者が出なかった場合は当選金が次の抽選に繰り越されるため、当選金の金額が桁違いとなることが多く、2023年7月10日現在、CA州のMEGA MILLIONSと呼ばれる宝くじは1等賞金が$480million (672億円、$1=140円)、Powerballと呼ばれる宝くじは1等賞金が$650million (910億円、$1=140円)となっています。

(さらに…)
New invoice system in japan 2023

日本型インボイス制度の導入と適格請求書発行事業者

2023年5月

  1. 日本型インボイス制度とは?

2023年10月から適格請求書等保存方式(=日本型インボイス制度)が導入されます。 インボイス制度においては「適格請求書(=インボイス)」等の保存がなくては、消費税申告書の作成上、仕入税額控除を行うことができない為、消費税納税額の増額が見込まれます。

  1. 適格請求書 (=インボイス) とは?

適格請求書とは適格請求書発行事業者が発行する請求書(納品書、領収証、レシート等含む)で、以下の6項目が記載された請求書です。

 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号  取引年月日   取引内容 (軽減税率の対象品目である旨) 取引金額(税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率) 税率ごとに区分した消費税額等 取引の相手方の名称登録番号
税率ごとの消費税
記載の有無が、現行の区分記載請求書との相違点です

適格請求書とは適格請求書発行事業者が発行する請求書(納品書、領収証、レシート等含む)です。

現行の「区分記載請求書」との相違点は、登録番号税率ごとの消費税額等の記載の有無になっています。

  1. 適格請求書発行事業者とは?

適格請求書発行事業者とは、課税事業者であり、自ら税務署長に申請し、適格請求書を発行することのできる事業者として登録を受けた事業者です。 適格請求書発行事業者として登録されると登録番号が発番され、国税庁のHP上で事業者の名称とともに公表されます。

適格請求書発行事業者となるためには、「適格請求書発行事業者申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。 2023年10月1日の日本型インボイス制度導入初日から登録をうける場合には、登録申請の受付は、原則として2021年10月1日から2023年3月31日までの申請とされていましたが、2023年4月以降でも2023年9月30日までに提出するのであれば2023年10月1日に登録をうけることが可能となりました。(2023年税制改正)2023年10月2日以降に登録をうけることも可能ですが、提出期限が異なりますのでご注意下さい。 

取引先が混乱しないようになるべく早めにお手続きをすることをおすすめいたします。

申請書の作成・提出はHLSで承ることが出来ますので、お気軽にお声掛けください

  1. 適格請求書発行事業者になることの意味_課税事業者の場合

現在課税事業者である事業者は、例外なく適格請求書発行事業者になるべきと考えられます。 仮にその事業者が適格請求書発行事業者でない場合には、自己の発行する請求書に記載される消費税額が、取引の相手方において仕入税額控除を行えないという不利益をもたらすことから、消費税を理由とした取引の停止や消費税相当額の値引き要請等が想定されるためです。

  1. 適格請求書発行事業者になることの意味_免税事業者の場合

免税事業者は、消費税の申告・納税義務を免除されることにより、いわゆる益税を享受しています。 免税事業者は適格請求書発行事業者になれません。免税事業者が適格請求書発行事業者になるには、自ら課税事業者の身分を選択し益税の便益を放棄する必要があります。

なお、免税事業者が発行する請求書上に記載される消費税は、取引の相手方で仕入税額控除が行えませんが、以下のように6年間の経過措置が設けられています

  • 2023/10~2026/9の期間に発行される請求書:消費税額の80%のみ仕入税額控除可能
  • 2026/10~2029/9の期間に発行される請求書:消費税額の50%のみ仕入税額控除可能
  • 2029/10以降発行される請求書:仕入税額控除可能な消費税はない

免税事業者が適格請求書発行事業者になること/ならないことのメリット/デメリットは以下の様に要約されます。

メリットデメリット
適格請求書発行事業者になる場合■ 適格請求書を発行できるため、
■ 商取引上のハンデがない従来通りの取引を継続できる(消費税を理由に取引を停止されることはない)
■ 益税を享受できない
■ 消費税の申告納付が必要となる
■ 消費税申告書作成のために、専門家報酬が増加する可能性がある
適格請求書発行事業者にならない場合■ 益税を享受できる
■ 消費税の申告納付は不要
■ 追加的な専門家報酬は生じない
■ 取引の相手方に消費税法上の不利益が生じるため、これを理由に
■ 取引停止される可能性がある消費税相当額の値引き要請の可能性がある

現在免税事業者の皆様は、適格請求書発行事業者となること/ならないことのメリット/デメリットを吟味の上、適格請求書発行事業者となるか否かの意思決定をなさってください。

なお、インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者として課税事業者になる場合には、負担軽減措置の特例を適用することが可能です。詳しくは 7.適格請求書発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置(2割特例)をご参照下さい。

より詳細な説明をご希望の場合は、弊社担当者にご連絡ください

なお、HLSでは適格請求書発行事業者となるための手続きの支援を承りますので、

お気軽にお声掛けください。

  1. 貴社の仕入業者の方々(Vendor)に対する方針

貴社のVendorが免税事業者に該当する場合、そのVendorは貴社に対して適格請求書を発行できません。この結果、貴社の消費税の計算上、消費税納税額が増加する(又は消費税還付額が減少する)可能性があり、その金額は適格請求書に該当しない取引に係る消費税額に概ね相当すると考えられます。

日本型インボイス制度導入後、貴社が経済的負担を負わないためには、Vendorに対して、以下の2つの対応が考えられます。

  1. Vendorに対して適格請求書発行事業者となるように要請をする
  2. 適格請求書発行事業者にならない事業者に対しては、消費税相当額の値引き要請をする

HLSでは、Vendorの方々に対して貴社の方針を表明するレタ-の作成支援を承りますので、お気軽にお声掛けください

  1. 適格請求書発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置(2割特例)

インボイス制度を機に、免税事業者から適格請求書発行事業者として課税事業者になる場合、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることができることとなりました。(2023年税制改正)

この特例を適用した場合、売上税額の2割を納付することとなります。

➀ 適用が可能な期間

2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間

適用が可能な期間のイメージ (12月決算法人の場合)

➁ 適用可能となる事業者

インボイス制度を機に、免税事業者(消費税課税事業者選択届出書の提出により課税事業者となった場合を含む。)から適格請求書発行事業者となった事業者

つまり「基準期間の課税売上高が1千万円以下の適格請求書発行事業者」が対象です。

ただし、例えば、以下の課税期間については2割特例の適用はできません。

●消費税課税事業者選択届出書を提出して2023年9月30日以前から課税事業者となる事業者の2023年10月1日を含む課税期間

●基準期間の課税売上高が1千万円以下であっても、事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる課税期間

 留意点

●一般課税、簡易課税のどちらを選択していても2割特例を適用可能

 適用にあたっては事前の届出は不要であり、申告時に選択することができます。

●2割特例適用後における消費税簡易課税制度選択届出書の提出時期の特例も設けられています。

詳細な説明をご希望の場合は、弊社担当者にご連絡ください。

***

免責事項: 当サイトの情報において、正確な情報の掲載に努めて参りますが、必ずしも正確性および合法性、安全性などを保証するものではありません。本記事の省略および誤りにより引き起こされる損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。

スタートアップの価値はどう決まる?

2023年4月4日に公認会計士協会が、「スタートアップ企業の価値評価実務」というガイドライン(以下、「スタートアップ価値評価ガイドライン」)を公表しました。

これは今まで日本においては明確なガイドラインが無かったスタートアップ企業の価値評価の留意点や種類株式の価値評価を中心に解説しています。

(さらに…)

米国輸出規制について 前編:米国輸出規則の概要

昨今、経済安全保障問題について活発に報道されるようになり、「輸出規制」という言葉が身近に聞かれるようになりました。輸出規則というと、日系企業にとっては、日本から海外に製品を輸出する際に、日本(自国)の輸出規則の対象となり、あくまでも自国だけの規制と思わている方も多いのではないかと思います。しかし、米国の輸出規則には、「再輸出規則」と呼ばれる制度があり、たとえ日本で製造した製品でも、米国産の製品・部品、ソフトウェア、技術が一定以上含まれている場合や、米国産の技術を使用して製造した製品である場合は、他国へ輸出する際に米国政府の許可が必要になることがあります。このような場合、無許可で製品を輸出してしまい、米国の輸出規則に違反してしまうと、禁固刑や米国製品、技術についての取引が禁止になるといった厳しい罰則があります。日本で製造活動を行っている企業でも、米国産の製品、技術、ソフトウェアを取扱っており、中国、ロシアを含む、米国が規制している国々と取引を行っている場合は、米国の輸出規制に注意する必要があります。

(さらに…)

日本の移転価格税制 「金銭の貸借取引・債務保証取引」改正のポイント(前編)

  1. はじめに

国税庁は2022年6月、「移転価格事務運営要領」(事務運営指針)の一部改正を発表しました。この改正は2022年1月にOECD移転価格ガイドラインの金融取引に関する指針を反映したものと考えられ、金融取引と費用分担契約に関する取扱いについて、指針の内容を一部改正しました。米国で活動する日系企業にも影響すると思われますので、ご留意ください。

(さらに…)

「電子帳簿保存法」に関するご案内

株式会社HLSグローバル

税理士法人HLSグローバル

社会保険労務士法人HLSグローバル

 

平素より格別なご高配をいただき、誠に有難うございます。   令和3年度の税制改正において、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等 の特例に関する法律(平成10年法律第25号。以下「電子帳簿保存法」といいます。)」の改正等が行われ、帳簿書類を電子的に保存する際の手続等について抜本的な見直しがなされ、令和4年1月1日からこれが施行される事になりました。

詳細は国税庁の電子帳簿保存法関係のサイト(電子帳簿保存法関係)をご参照いただければと思いますが、クライアントの皆様方におかれましては、施行前に以下のような点にご留意くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

(さらに…)