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ドイツ税務のアップデート2026年5月

  1. 人材確保に活用できる非課税ベネフィット
  2. 接待費の損金算入と電子インボイス対応
  3. EV社用車・事業用電気自動車の税務優遇

1.人材確保に活用できる非課税ベネフィット

ドイツでは、人材確保や従業員定着の観点から、給与水準の見直しだけでなく、税務上優遇される福利厚生制度の活用が重要になっています。特に、インフレや人件費上昇が続く中で、単純な給与増額は会社側の社会保険料負担や総人件費の増加につながりやすく、従業員にとっても手取り額の増加が限定的となる場合があります。

この点、一定の要件を満たす現物給付や手当を活用することで、会社側のコストを抑えつつ、従業員の実質的な可処分所得を高めることが可能です。ドイツ子会社を有する日系企業においても、現地人材の採用・定着、駐在員やローカルマネジメント層への報酬設計、福利厚生制度の見直しにおいて、これらの制度を検討する価値があります。

月額50ユーロまでの現物給付

雇用主は、従業員に対して月額50ユーロまでの現物給付を、原則として賃金税および社会保険料の対象外として支給することができます。年間では600ユーロ相当のベネフィットとなるため、従業員にとっては実質的な手取り増加につながります。

ただし、この制度は「非課税枠」ではなく「非課税限度額」として扱われる点に注意が必要です。つまり、月額50ユーロを1セントでも超えると、超過部分だけでなく、その現物給付全額が課税・社会保険料の対象となる可能性があります。

また、現金支給は認められません。給付はあくまで実質的な現物給付である必要があり、例えば一定の要件を満たす商品券、プリペイドカード、福利厚生プラットフォームなどの利用が考えられます。現金同等物や自由に換金できるような仕組みは、税務上の優遇対象から外れるリスクがあります。

日系企業においては、日本本社の福利厚生制度をそのままドイツに適用するのではなく、ドイツ税法上「現物給付」として認められる設計になっているかを確認することが重要です。

食事手当・社員食堂・食事券

食事手当も、従業員満足度を高めるために活用しやすい制度です。雇用主は、1労働日あたり一定額まで食事手当を支給することができます。2026年時点では、1労働日あたり最大7.67ユーロの食事補助が可能とされており、そのうち現物給付価額は4.57ユーロ、雇用主による非課税補助部分は3.10ユーロとされています。

この現物給付価額については、雇用主が25%の一律課税を選択するか、従業員の自己負担として処理することが可能です。実務上は、社員食堂、食事券、デジタルミールバウチャーなどと組み合わせて活用されることが多い制度です。

日系企業では、工場や物流拠点では社員食堂、オフィス勤務者には食事券やデジタル食事補助を導入するなど、勤務形態に応じた制度設計が考えられます。ハイブリッド勤務が一般化している企業では、在宅勤務日と出社日の取扱いを明確にしておくことも重要です。

ドイツチケットなどのモビリティ補助

通勤費や公共交通機関の利用補助も、従業員にとって分かりやすいベネフィットです。ドイツチケットの月額料金は2026年以降63ユーロとされており、雇用主がこの金額を全額負担する場合、年間756ユーロ相当の通勤関連ベネフィットとなります。

公共交通機関の利用補助は、税金および社会保険料の負担を抑えながら、従業員の通勤コストを軽減できる制度です。また、環境配慮型の企業姿勢を示す手段としても有効です。

特に日系企業では、都市部のオフィス勤務者、公共交通機関で通勤する現地社員、出張頻度の高い従業員などにとって、モビリティ補助は実用性の高い福利厚生となります。一方で、社用車制度や駐車場提供と併用する場合には、給与課税上の取扱いを整理しておく必要があります。

保養手当

従業員の休暇取得やリフレッシュを支援する制度として、保養手当の活用も考えられます。保養手当は、雇用主が25%の一律課税を行うことで、従業員側では非課税として取り扱われます。

年間の上限額は、従業員本人について156ユーロ、配偶者または生活パートナーについて104ユーロ、子ども1人あたり52ユーロです。家族構成によっては、従業員本人だけでなく家族を含めた福利厚生として活用できます。

ただし、保養手当は休養・レクリエーション目的で使用される必要があり、その使用目的を文書で確認・保存しておくことが求められます。単なる追加報酬として支給した場合、税務上の優遇が否認される可能性があります。

インターネット手当

在宅勤務やハイブリッド勤務が定着する中で、インターネット手当は実務上使いやすい制度の一つです。雇用主は、従業員に対して月額最大50ユーロ、年間600ユーロまでインターネット費用を補助することができます。

この場合、雇用主が25%の一律課税を負担することで、従業員側では非課税となり、社会保険料も発生しません。業務利用か私用利用か、また勤務場所がオフィスか自宅かにかかわらず適用可能とされている点も、柔軟に活用しやすい理由です。

ただし、補助額は従業員が実際に負担しているインターネット費用を上回ってはなりません。そのため、導入時には従業員から費用に関する申告や証明を取得し、会社側で保存する運用が望まれます。

日系企業では、在宅勤務手当、通信費補助、IT機器貸与などの制度と重複しないよう、給与規程やリモートワーク規程の中で位置づけを明確にしておくことが重要です。

健康増進措置

従業員の健康管理やウェルビーイング向上を目的とした制度として、健康増進措置も税務上優遇されています。認定された職場健康増進措置については、年間600ユーロまで賃金税および社会保険料の負担なく提供することができます。

対象となるためには、社会法典第5編第20条および第20b条に基づく予防ガイドラインに沿った認定を受けていることが必要です。例えば、一定の健康プログラム、運動・予防・ストレス管理に関する認定講座などが対象となり得ます。

注意すべき点は、一般的なスポーツジム会費や任意のフィットネス費用が、常に非課税対象となるわけではないことです。制度を導入する場合には、対象プログラムが税務上の要件を満たしているかを事前に確認する必要があります。

重要な前提:通常給与への上乗せであること

これらの非課税ベネフィットを活用するうえで特に重要なのは、原則として「通常支払うべき給与に追加して」支給される必要があるという点です。

既存給与の一部を減額し、その代わりに非課税ベネフィットを支給するような給与組替えは、税務上認められない可能性があります。このような取扱いを行うと、非課税または優遇措置が否認され、賃金税や社会保険料の追徴リスクが生じます。

そのため、新たな福利厚生制度を導入する場合には、雇用契約、給与規程、ベネフィットポリシー、給与明細上の表示方法を含めて、制度設計を慎重に行う必要があります。

日系企業における活用の方向性

ドイツの日系企業では、報酬制度が日本本社主導で設計されているケースも少なくありません。しかし、ドイツでは給与課税・社会保険・福利厚生の取扱いが日本と大きく異なるため、現地税制に即したベネフィット設計が重要です。

特に、以下のような場面では、非課税ベネフィットの活用余地があります。

  • 現地社員の給与改定時 
  • 新規採用時のオファーパッケージ設計 
  • 駐在員・ローカルマネジメント層の待遇見直し 
  • 在宅勤務制度・ハイブリッド勤務制度の整備 
  • 人材定着を目的とした福利厚生制度の拡充 
  • ESGや健康経営を意識した人事施策の導入 

これらの制度は複数を並行して活用できる場合があります。適切に設計すれば、従業員にとっては実質的な手取り増加となり、会社にとっては採用競争力や従業員満足度の向上につながります。

一方で、各制度には金額上限、証憑保存、支給方法、給与への追加性、対象サービスの要件など、細かなルールがあります。制度導入後に税務調査で否認されないよう、導入前の確認と運用ルールの文書化が不可欠です。

実務上の対応ポイント

日系企業がドイツで福利厚生制度を見直す際には、単純な給与増額だけでなく、現物給付、食事手当、交通費補助、インターネット手当、健康増進措置などを組み合わせた報酬設計を検討することが有効です。制度ごとの上限額や形式要件を守り、給与規程・雇用契約・経費精算ルールに反映させることで、税務リスクを抑えながら従業員にとって魅力的な報酬パッケージを構築できます。

2.接待費の損金算入と電子インボイス対応

ドイツでは、事業上の接待費を税務上の事業経費として損金算入するためには、接待の業務関連性、金額の妥当性、参加者、接待目的、日付、場所、請求書・領収書の形式などについて、適切な証憑を備える必要があります。

2025年11月19日付の連邦財務省(BMF)通達では、事業上の目的で飲食店において接待を行った場合の証憑要件について、改めて詳細な取扱いが示されました。特に、2025年1月1日以降に導入された電子インボイス制度との関係で、接待費の証憑管理は従来以上に重要になっています。

日系企業においても、日本本社からの出張者、ドイツ子会社の営業担当者、現地マネジメントによる顧客・取引先との会食は頻繁に発生します。今後は、単にレストランのレシートを保存するだけではなく、電子インボイス、レジシステム、TSE情報、チップの記録、社内経費精算システムとの整合性まで確認する必要があります。

250ユーロを超える接待費と電子インボイス

ドイツでは、国内B2B取引において、原則として電子インボイス制度が導入されています。接待費についても、飲食店での売上が消費税法上の少額請求書限度額である250ユーロを超える場合には、電子インボイス制度との関係を確認する必要があります。

電子インボイスとは、単なるPDFや画像ファイルではなく、構造化された電子データ部分を含む請求書をいいます。ZUGFeRDやXRechnungなどの形式が代表例です。一方、PDFや画像データ、紙のレシートは、電子的に送付されていたとしても、原則として「その他の請求書」として扱われます。

もっとも、飲食店で接待が行われた時点では、まず従来型の紙の接待領収書や電子形式の「その他の請求書」が発行され、その後、必要に応じて電子インボイスにより訂正・補完されるケースも想定されています。実務上は、接待直後に受領した紙の領収書と、後日受領する構造化された電子インボイスデータを関連付けて保存する運用が重要です。

少額請求書、通常請求書、自己作成の接待記録

接待費の証憑には、金額や発行形式に応じて複数のパターンがあります。250ユーロ以下の少額請求書については、通常請求書よりも簡易な記載要件が認められる一方、250ユーロを超える場合には、より厳格な請求書要件が問題となります。

また、ドイツでは現時点で全事業者に対する登録レジ使用義務があるわけではないため、飲食店によっては機械発行の接待領収書や電子インボイスが発行されない場合もあります。さらに、国外で接待を行った場合には、ドイツ国内の形式要件をそのまま満たす領収書を取得できないこともあります。

このような場合には、飲食店からの請求書に加え、会社側で作成する自己作成の接待記録、すなわち参加者、接待目的、業務上の関係、支払内容などを記載した補足資料が重要になります。ただし、いわゆる「ビールコースター」や簡単なメモだけでは、税務上の証憑として十分とはいえません。特に仕入税額控除を行う場合には、消費税法上の請求書要件を満たす必要があります。

レジシステム、TSE情報、QRコードの確認

飲食店が電子レジシステムを使用して接待領収書を発行する場合、そのレジデータは認証済み技術的安全装置、いわゆるzTSEまたはTSEによって保護されている必要があります。

機械発行の接待領収書について税務上の損金算入を確保するためには、領収書に一定の情報が含まれているかを確認することが重要です。例えば、電子レジシステムのシリアル番号、TSEのシリアル番号、取引番号、取引開始・終了時刻、署名カウンター、検証値などが問題となります。

2024年以降は、発行義務のあるレシートには、電子レジシステムのシリアル番号とTSEのシリアル番号の双方が表示される必要があるとされています。これらの情報は、紙面上に読み取れる形で記載される場合もあれば、QRコードに格納される場合もあります。

そのため、経費精算を行う従業員や経理担当者は、領収書上のQRコードが単なる広告リンクやクーポンではなく、TSE関連情報を含むものであるかを確認できる体制を整えることが望まれます。実務上は、確認用アプリを利用してQRコードの内容を検証することも考えられます。

TSE障害時の取扱い

接待領収書に必要なTSE情報が記載されていない場合でも、直ちに必ず損金算入が否認されるわけではありません。例えば、飲食店側のTSEに一時的な障害が発生していた場合には、その旨が領収書上に明確に表示されていることが重要です。

具体的には、「TSE故障」などの表示が領収書に記載されている場合、一定の条件のもとで接待費の損金算入が認められる可能性があります。ただし、このような例外的な取扱いに依存するのではなく、会社としては、可能な限り形式要件を満たす領収書を取得する運用を徹底すべきです。

また、接待後に日を改めて請求書が発行され、当該請求書が電子レジシステムによらず作成され、かつ銀行送金やクレジットカードなどの非現金決済によって支払われる場合には、TSE情報が不要となるケースもあります。この場合には、支払方法が請求書上で確認できること、または別途支払証憑を保存しておくことが重要です。

チップの取扱い

ドイツでは、接待時にチップを支払うことが一般的です。チップも、適切に証明される限り、接待費と同様に税務上考慮され得ます。

チップの証明方法としては、請求書上にチップ額を記載し、飲食店側に確認してもらう方法や、機械発行の接待領収書上にチップ額を表示する方法があります。特にクレジットカードやキャッシュレス決済でチップを含めて支払う場合には、後日、経費精算時にチップの内訳が不明確にならないよう注意が必要です。

実務上は、手書きでチップを追記する方法よりも、レジシステム上でチップを記録し、領収書に反映させる方法の方が、証憑としての信頼性が高まります。近年では、セルフオーダー端末やWeb注文システムにおいて、注文時または支払時にチップを入力する仕組みも増えています。このような場合には、チップもレジシステム上で記録されるため、会計処理との連携がしやすくなります。

なお、飲食店の事業者自身に帰属するチップについては、主たるサービスに対応する消費税率との関係も問題となります。レストランサービスに軽減税率が適用される場合には、チップ部分の消費税処理についても正しくシステム設定されているかが重要になります。

電子インボイスを接待証憑として保存する場合

接待費に関する請求書は、紙だけでなく、電子的に発行・送付されることもあります。この場合、電子インボイス、PDF、画像ファイル、またはデジタルレシートなど、形式に応じて保存要件が異なります。

電子インボイスとして発行される場合には、構造化された電子データ部分を変更せずに保存する必要があります。接待目的や参加者など、会社側で追加すべき情報は、可視化された請求書画面やPDFに追記することも考えられますが、元の構造化データ自体は改変せず保存しなければなりません。

実務上は、紙の接待領収書、自己作成の接待記録、後日受領した電子インボイスデータを相互に関連付けて保存する運用が必要です。経費精算システムや文書管理システムを利用している場合には、これらの証憑が一体として確認できるようにしておくことが望まれます。

税務調査における確認ポイント

税務当局は、接待領収書を単に経費の裏付け資料として見るだけではありません。接待費については、まず業務上の関連性が確認されます。例えば、家族の誕生日や私的イベントに近いタイミングでの会食、子ども向けメニューが含まれる会食などは、業務関連性について追加説明を求められる可能性があります。

また、接待費の70%損金算入、30%損金不算入という処理だけを機械的に行えば足りるわけではありません。接待の目的、参加者、金額の妥当性、請求書要件、仕入税額控除の可否、支払方法、チップの記録などを総合的に確認する必要があります。

さらに、接待領収書は他の税務項目との整合性確認にも利用されます。例えば、同じ日にA市で接待をしている一方、車両運行記録上は300キロ以上離れたB市で別の予定が記録されている場合など、接待領収書が他の記録との不整合を示す資料となる可能性があります。

日系企業における実務対応

日系企業では、ドイツ法人の従業員だけでなく、日本本社からの出張者や駐在員が接待費を立替払いすることもあります。この場合、日本側の経費精算ルールでは十分であっても、ドイツ税務上の要件を満たしていない可能性があります。

そのため、ドイツ法人では以下のような対応が推奨されます。

  • 接待費精算フォームに、参加者、会社名、接待目的、業務上の関係、支払方法、チップ額を記載する欄を設ける 
  • 250ユーロ超の接待費については、電子インボイスの要否を確認する 
  • 紙の領収書と後日受領する電子インボイスを関連付けて保存する 
  • TSE情報、QRコード、レジシステム情報の確認ルールを経理担当者向けに整備する 
  • チップの記録方法を統一する 
  • 出張者や営業担当者向けに、ドイツで必要となる接待証憑の取得方法を周知する 
  • 経費精算システムがドイツの電子インボイスおよび証憑保存要件に対応しているか確認する 

特に、日本本社のグローバル経費精算システムを使用している企業では、ドイツ固有の証憑要件がシステム上反映されているかを確認する必要があります。単に画像ファイルを添付するだけでは、電子インボイスの構造化データやTSE関連情報の保存として不十分となる可能性があります。

実務上の対応ポイント

接待費については、従来のように紙の領収書を受領し、社内で70%を損金算入・30%を損金不算入として処理するだけでは、十分とはいえない時代になっています。電子インボイス、TSE情報、QRコード、チップ、自己作成の接待記録、支払証憑を一体として管理し、税務調査時に業務上の関連性と形式要件を説明できる体制を整えることが重要です。

3.EV社用車・事業用電気自動車の税務優遇

ドイツでは、電気自動車の普及を促進するため、社用車および事業用車両について税務上の優遇措置が設けられています。特に、従業員や役員が社用車を私的にも利用する場合の給与課税、また企業や個人事業主が事業用電気自動車を取得する場合の減価償却において、従来型の内燃機関車両と比べて大きな税務メリットが生じる可能性があります。

日系企業においても、駐在員や現地マネジメント向けのカンパニーカー制度、営業車両の更新、環境配慮型モビリティへの移行を検討する際には、これらの税務上の取扱いを確認することが重要です。

電気自動車の社用車に対する0.25%ルール

ドイツでは、社用車を従業員や役員が私的に利用できる場合、その私的利用部分は「金銭的価値のある利益」として所得税の課税対象となります。通常の内燃機関車両では、原則として車両の税込リスト価格の月額1%を課税対象額として算定します。

これに対し、一定の完全電気自動車については、月額0.25%のみを課税対象とする優遇措置が適用されます。対象となるのは、2025年7月1日から2030年12月31日までに取得され、税込リスト価格が10万ユーロ以下の完全電気自動車です。従来よりも対象となる価格上限が引き上げられているため、比較的高価格帯のEVについても優遇を受けられる可能性があります。

例えば、税込リスト価格が5万ユーロの車両について、私的利用に係る月額課税対象額は以下のように異なります。

  • 内燃機関車両:5万ユーロ × 1% = 月額500ユーロ 
  • 完全電気自動車:5万ユーロ × 0.25% = 月額125ユーロ 

このように、同じ価格帯の車両であっても、EVを選択することで従業員側の課税所得を大きく抑えることができます。会社側にとっても、より魅力的な社用車制度を設計しやすくなる点がメリットです。

10万ユーロ超のEV・プラグインハイブリッド車の取扱い

税込リスト価格が10万ユーロを超える完全電気自動車については、0.25%ルールではなく、0.5%ルールが適用されます。また、プラグインハイブリッド車についても、一定の要件を満たす場合には0.5%ルールの対象となります。

具体的には、プラグインハイブリッド車について、電動走行距離が80キロメートル以上であり、かつCO₂排出量が1キロメートルあたり50グラム以下であることが要件とされています。これらの要件を満たさない場合には、通常の1%ルールが適用される可能性があります。

車両選定にあたっては、購入価格やリース料だけでなく、税込リスト価格、EV・ハイブリッドの区分、電動走行距離、CO₂排出量、従業員側の給与課税への影響を総合的に比較する必要があります。

通勤利用時の追加課税もEVでは軽減

社用車を自宅と勤務先の往復にも利用できる場合には、私的利用分に加えて、通勤利用に係る課税対象額も発生します。通常の内燃機関車両では、税込リスト価格の0.03%に片道通勤距離を乗じた金額が、月額の追加的な課税対象額となります。

これに対し、0.25%ルールの対象となる完全電気自動車では、通勤利用についても月額0.0075%が適用されます。

例えば、税込リスト価格5万ユーロ、片道通勤距離20キロメートルの場合、追加的な月額課税対象額は以下のようになります。

  • 内燃機関車両:5万ユーロ × 20km × 0.03% = 月額300ユーロ 
  • 完全電気自動車:5万ユーロ × 20km × 0.0075% = 月額75ユーロ 

私的利用部分と通勤利用部分の双方で課税額が抑えられるため、従業員にとってはEV社用車の利用メリットが大きくなります。

計算基礎は実際の購入価格ではなく税込リスト価格

社用車課税において注意すべき点は、計算の基礎となるのが、実際の購入価格やリース料ではなく、初回登録時点の税込リスト価格であるという点です。メーカーオプションや工場装備の特別仕様も含まれます。

そのため、ディーラーから大幅な値引きを受けた場合や、リース契約を利用する場合でも、課税計算上は割引後の実際支払額ではなく、税込リスト価格が基準となります。

また、中古の電気自動車についても、一定の条件を満たせば優遇措置の対象となります。この場合も、再販売価格ではなく、初回登録時点の当初税込リスト価格が基準となる点に注意が必要です。

事業用電気自動車の逓減償却

電気自動車については、社用車課税だけでなく、事業用資産として取得する場合の減価償却にも注目すべき優遇措置があります。新たな投資促進措置により、一定の事業用電気自動車について、初年度に最大75%の逓減償却が認められる制度が導入されています。

この制度を利用するためには、車両が事業のために長期的に使用される目的で取得され、固定資産として分類される必要があります。また、取得時期については、2025年6月30日後から2028年1月1日前までの取得が対象とされています。さらに、当該車両がドイツ自動車税法上の電気自動車に該当することも前提となります。

この逓減償却は、特に営業車両、サービス車両、役員用車両など、事業上の利用実態が明確な車両について検討余地があります。取得年度に大きな償却費を計上できるため、投資年度の課税所得を圧縮する効果が期待できます。

事業廃止や車両売却を予定している場合の留意点

個人事業主やオーナー経営者の場合、事業廃止を予定している時期に電気自動車を取得することで、逓減償却を活用した税務プランニングが可能となる場合があります。たとえば、実際に事業で使用する目的でEVを取得し、固定資産として計上したうえで、初年度に大きな償却費を計上するケースです。

ただし、税務上認められるためには、車両が実際に事業活動に使用されていること、取得が経済的に合理的であること、単なる節税目的だけではないことを説明できる必要があります。記事中の実例でも、車両が事業廃止まで実際に営業活動に使用され、固定資産としての性質を有していることが重要な前提とされています。

事業廃止時には、車両を私有財産へ移す場合に含み益や消費税上の取扱いが問題となることがあります。そのため、取得時点だけでなく、将来の売却、私的利用、事業廃止、私有財産への移転まで含めて、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

日系企業における実務対応

日系企業では、社用車制度が日本本社の方針やグローバルポリシーに基づいて設計されていることがあります。しかし、ドイツでは車両の私的利用に関する給与課税が明確に定められており、車種選定によって従業員側の税負担が大きく異なります。

そのため、ドイツ法人で社用車制度を運用する場合には、以下の点を確認することが望まれます。

  • 社用車ポリシーにEV・プラグインハイブリッド車の取扱いを明記する 
  • 車両ごとの税込リスト価格、CO₂排出量、電動走行距離を確認する 
  • 私的利用と通勤利用の有無を雇用契約または社用車規程で明確にする 
  • 駐在員・現地役員・営業担当者ごとの課税影響を試算する 
  • リース車両と購入車両の税務コストを比較する 
  • 充電費用、充電設備、会社負担分の取扱いを整理する 
  • 事業用車両として取得する場合には、減価償却、私的利用、消費税、売却時の処理を事前に確認する 

特に、駐在員に社用車を提供する場合、日本側では福利厚生の一部として整理されていても、ドイツ側では給与課税の対象となる可能性があります。ドイツの給与計算に適切に反映されているか、給与明細や年末の賃金税証明との整合性を確認することが重要です。

実務上の対応ポイント

EV社用車は、従業員の給与課税を抑えながら、企業の環境対応や採用競争力の向上にも資する有効な制度です。また、事業用電気自動車については、初年度に最大75%の逓減償却が認められる場合があり、投資計画や車両更新計画に大きな影響を与える可能性があります。車両導入時には、税込リスト価格、取得時期、利用実態、通勤利用、充電費用、減価償却、将来の売却・事業廃止時の処理まで含め、税務・給与・会計の観点から総合的に検討することが望まれます。


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