令和8年度(FY2026)税制改正大綱の概要

― 外資系企業・国際税務に関する主なポイント ―


令和7年12月26日、「令和8年度税制改正大綱」が閣議決定されました。
本改正では、物価上昇や賃上げへの対応に加え、「強い経済」の実現を目的として、設備投資・研究開発の促進と、税務の公平性・透明性の確保が同時に進められています。

特に外資系企業にとっては、活用可能な税制優遇が拡充される一方で、国際税務や関連者取引に関する管理強化が進む点が大きな特徴です。

本改正は、税額の増減以上に「グループ内取引の説明責任」が重視される内容となっている点に留意が必要です。

以下では、外資系企業および国際税務の観点から、特に重要なポイントを解説します。


1.国際税務・グループ内取引に関する改正の方向性

関連者取引に係る書類保存義務の創設

令和8年度改正では、「公平かつ円滑な納税のための環境整備」の一環として、企業グループ間取引に係る書類保存義務が新たに創設されます。

本改正は移転価格税制そのものを変更するものではありませんが、外資系企業において頻繁に行われる以下のような取引が主な対象となります。

  • 海外親会社等へのロイヤルティの支払
  • 管理サービス費・経営指導料
  • IT、研究開発、マーケティング等に係る役務提供
  • 無形資産(知的財産権、ソフトウェア等)の利用に関する取引

これらの取引については、対価算定の根拠や提供内容を裏付ける契約書・明細資料等の保存が、これまで以上に重要となります。

また、書類不備がある場合には、青色申告の承認取消しにつながる可能性がある点にも留意が必要です。

外資系企業においては、日本子会社単独での対応にとどまらず、海外本社(HQ)との連携体制や契約管理の見直しが実務上の重要論点となります。


2.研究開発税制の見直しと国際共同研究への影響

重点産業技術に係る研究開発税制の強化

研究開発分野では、AI・半導体・バイオ・量子・宇宙などを対象とする「重点産業技術試験研究費」に係る新たな税額控除制度が創設されます。

外資系企業との関係では、特に以下のケースが重要となります。

  • 日本子会社が海外グループ企業と共同研究を行っている場合
  • 日本子会社が海外法人へ研究開発を委託している場合

国外で実施される委託研究については、税額控除対象額が一定割合に制限される仕組みが導入されており、研究の実施場所、契約形態、成果の帰属関係の整理がこれまで以上に重要となります。

研究開発機能を日本に有する外資系企業にとっては、税務メリットを享受できる可能性がある一方、制度適用に向けた事前の検討・設計が不可欠です。


3.外資系企業に関係の深い投資促進税制

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

国内投資を後押しする施策として、一定規模以上の設備投資を行う法人を対象に、即時償却または税額控除を選択適用できる新たな投資促進税制が創設されます。

本制度は、日本市場向けの生産拠点や研究開発拠点を有する外資系企業にとって有効な選択肢となり得ますが、以下の点に留意が必要です。

  • 最低投資額や規模要件
  • 雇用増加や国内投資割合等の要件
  • 他の税制優遇との併用制限

日本への追加投資を検討している外資系企業にとっては活用余地がある一方、事前の税務・事業設計が重要となります。


4.大企業・外資系企業に対する税務規律の強化

研究開発税制や投資関連税制については、一定規模以上の法人に対し、賃上げ要件や設備投資要件を満たさない場合の税額控除制限が強化されます。

特に外資系企業においては、

  • 日本子会社単体の財務数値・雇用状況で判定される点
  • グローバル戦略と日本の税制要件との間にギャップが生じやすい点

から、本社主導の戦略と日本の制度要件をすり合わせる視点が不可欠です。


5.人事・給与・赴任者(Expat)に関係する改正

個人所得課税分野では、各種控除の見直しや非課税限度額の引上げ等が行われています。

外資系企業においては、以下の観点からの確認が重要です。

  • 高所得役員・赴任者への影響
  • 福利厚生制度(食事、通勤手当等)の税務上の取扱い
  • グロスアップ給与設計への影響

制度自体は改善されているものの、日本特有の実務運用への対応は引き続き重要です。


6.まとめ ― 外資系企業にとっての実務上の示唆

令和8年度税制改正は、外資系企業にとって以下の特徴を有しています。

  • 投資・研究開発分野では活用可能な税制優遇の拡充
  • 国際税務分野では税率変更よりも管理・説明責任の強化
  • 日本子会社主導での税務管理・契約整理の重要性の高まり

外資系企業においては、税務対応を事後的な処理にとどめるのではなく、事前の制度設計および管理体制の整備がこれまで以上に重要となる改正といえるでしょう。本改正を機に、グループ内取引や研究開発体制、投資計画について、改めて日本税制の観点から整理する企業も増えることが想定されます。

以後、数回に分けて改正内容について解説していきます。



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