ドイツ税務のアップデート2025年9月

  1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期
  2. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限
  3. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正
  4. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

  1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期

単独または支配的な立場にある株主は、自身の会社に対する債権が支払期日に到達した時点で、たとえ実際に支払われていなくても、その債権を受け取ったものとみなされます。これは、支配株主であれば通常、自分に対する支払いのタイミングを自ら決定できる立場にあるためです。

事案の概要


本事案では、有限会社(GmbH)の支配株主が、会社の経済的困難により実際には支払いを受けていないにもかかわらず、会社に対する支払期日到来済の債権を「受領した」とみなすことができるかどうかが争点となりました。

判決の内容

財務裁判所(FG)は、支配株主は、会社に対する債権が支払期日を迎えた時点で既に受領したものとみなされると判断しました。この「みなし受領」の原則は、少なくとも債権が明確で、争いがなく、支払期日を迎えており、かつ支払能力のある会社に対するものである場合には適用されます。

この場合の「会社の支払不能」とは、資金不足に基づく恒常的な金銭債務の履行不能状態のみを指します。通常、会社が「崩壊」する前、すなわち破産手続開始の申立てがされていない限りは、支払不能とは認められません。

たとえ会社が経済的困難に直面していたとしても、支配株主が劣後条項付きの金銭貸付けを行い、合意された利息が会社の会計上は負債として計上されている一方で、数年間支払われていない場合でも、その利息は株主に受領されたものとみなされます。

これは、会社が他の債権者に対しての支払い義務を履行しており、破産申立てもされていないような状況であれば適用されます。

また、利息の支払期日は、劣後条項の存在によって変更されるものではありません。劣後条項に、支払期日を遅らせる「支払猶予の合意」が含まれていない限り、利息は当初の契約どおりの期日に支払期日を迎えます。

劣後条項の効力は、破産法上の支払期日(ドイツ破産法 §17(2) 1項)にのみ影響を与えるものであり、民法上の支払期日(BGB §271)とは異なります。

民法上の「支払期日」とは、債権者が支払いを請求できるようになり、債務者が遅れていれば遅延損害金が発生したり、時効が進み始めるタイミングを指します。

一方、破産法上の「支払期日」とは、個別の債権回収から、破産手続などの全体的な債権回収に移行する判断の基準となる時点を意味します。

劣後条項(他の債権者への支払いが優先されるという合意)は、会社が本当に破産状態にある場合に初めて効力を発揮します。それまでは、支払期日そのものや請求権の発生には影響を与えません。

  1. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限

本事案は現金取引の多いスナックバーを経営している納税者に対して税務調査が行われ、納税者の現金管理に不備があると指摘された事案です。

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の財務裁判所(2023年8月28日付、3 K 25/22号。上訴中:連邦財務裁判所BFH X R 27/24)の判断は下記のとおりです。

電子レジの操作が不正に行える可能性があることを考えると、そのレジに関する組織的な資料やプログラム仕様書などが整備されていない場合、それだけで重大な不備と見做されます。このような不備があると、税務当局は納税額を推計で決定することが認められるというのが裁判所の判断です。

また、税務署が定率(標準的な割合)を用いて課税額を算定したことについても、裁判所は妥当だと判断しました。連邦財務裁判所がこの方法に疑問や懸念を示していたとしても、公式な定率表を用いて同業他社と比較する推計手法は、依然として広く認められていると述べられました。

推計に対する異議申し立ては、税務調査の防御における“日常業務”

実務的なアドバイス:

今回の判決は、税務調査に対する納税者へのアドバイスにおいて非常に重要です。税務調査では、税務署による推計の権限や、その根拠となる手法について対処することが、税理士の基本業務の一つとなっています。

上訴審(事件番号X R 19/21)では、連邦財務裁判所(BFH)は、公式な基準に基づく金額の推計には依然として様々な不明確さがあると明確に述べています。このことは、定率による推計が完全に否定されるという意味ではありませんが、推計額を減らせる可能性があることを意味します。

また、直近の2024年10月4日の判決(X B 105/23)では、推計の不確実性を踏まえて、連邦財務裁判所が上訴を認めている事案も出てきています。

  1. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正

連邦参議院は2025年7月11日、「ドイツ経済拠点強化のための投資即時プログラムに関する法律」(取得番号249194)に同意しました。これにより、CO2排出のない自動車(例:純粋な電気自動車や水素車)の税務上の取り扱いが変更されます。具体的には総額リスト価格と減価償却の扱いが変わります。

従業員への貸与に伴う金銭的利益(インカインド)

雇用主が従業員にCO2排出のない社用車を私的利用も認めて貸与した場合、課税対象となる給与として現物給与が発生します。

数年前から以下が認められています:

  • 1%ルールで金銭的利益を算出する際、総額リスト価格(BLP)を4分の1にできる
  • 走行記録簿方式を適用する場合、減価償却費(AfA)やリース料も相応に減額できる

ただし、これには車両の総額リスト価格が一定の限度額を超えないことが条件です。この限度額は近年引き上げられてきました:

  • 2018年12月31日以降の取得:60,000ユーロ
  • 2023年12月31日以降の取得:70,000ユーロ
  • 2025年6月30日以降の取得:100,000ユーロ

限度額を超える場合は、算定基礎として総額リスト価格の半分を用います。引き上げ後の限度額は2025年6月30日以降に取得した車両に初めて適用されます。

特に社用車では、取得時期は「従業員に私的利用目的で初めて貸与された日」とみなされます(財務省通達 2014年6月5日、番号106294)。

例:

  • 雇用主Aが2025年1月1日から従業員BにBLP 98,000ユーロのE-社用車を貸与。
    → この場合、当該日は限度額70,000ユーロを超えているため、算定基礎は半額BLP。

例:

  • 雇用主Aが2025年8月1日から従業員CにBLP 98,000ユーロのE-社用車を初めて貸与。この車両は2025年6月に購入され、プール車として業務専用で使用されていた。
    → この場合は、2025年7月1日から限度額が100,000ユーロに引き上げられているため、算定基礎は4分の1BLPでよい。

なお、付随する消費税(付加価値税)に関しては、E-車両であっても常に満額のBLPが基礎となります。

E-車両に対する減価償却の優遇

さらに、立法者は所得税法(EStG)第7条第2a項に、CO2排出のない電気自動車に対する追加の償却制度を導入しました。対象は2025年7月1日から2027年12月31日までに新規取得した車両です(中古車は対象外)。

対象車両については以下の算術的・逓減法による特別償却が可能です:

  • 取得年:75%
  • 翌年:10%
  • 2年後:5%
  • 3年後:5%
  • 4年後:3%
  • 5年後:2%

この新しい償却制度は2025年以降、車種(乗用車、電動商用車、トラック、バスなど)を問わず適用されます。目的は、企業や事業主にCO2排出ゼロ車両の導入を促すことです。

一方で、従業員がこの特別償却を享受することはできません。従業員が走行記録簿方式で私的利用分を算出する場合や「コスト上限」が適用される場合に減価償却は関連しますが、その場合も現行通達では耐用年数8年間での定額(線形)償却とされ、雇用主が認められる特別償却は考慮されません。

補足:

従業員が自家用車で出張した場合に、実際の車両コストを経費として申告したり、雇用主が実費を非課税で精算する場合でも、コスト(減価償却を含む)は耐用年数に応じて期間配分する必要があります(連邦税務裁判所判決 2015年9月3日、VI R 27/14)。

  1. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

業務関係をどのように具体的に構築するかは多様であり、実務上それを「雇用」か「自営業」かに明確に分類するのはしばしば困難です。そのため、社会保険料の追徴課税(加算金付き)を避けるには、早めに慎重かつ的確な判断が求められます。

背景

建設業では昔から偽装自営業が知られていましたが、最近では旅行添乗員、清掃員、フィットネストレーナー、介護士、出版社、運送業、IT業界でも増加しており、「発注者」は保険料を支払っていません。追徴金や利息、労働保護に関する訴訟のリスクがあるため、発注者は早めに就労形態を確認する必要があります。

発注者・受注者の双方にとって、自営業か雇用関係かの区別は必ずしも明確ではありません。特に問題となるのは、社会保険法・税法・労働法における判断基準が一致していないことです。

まず「本物の」自営業者とは、複数の顧客を持ち、どの仕事をどの条件で引き受けるかを自分で決め、いつ・どこで・どのように働くかも自由に決められる人です。多くの場合、自分のオフィスや設備を持っています。

一方で「本物の」従業員は、雇用契約に基づき、雇用主の指示に従って労働時間や労働力を提供する義務を負います。特に勤務時間、勤務地、業務遂行の条件について雇用主の指揮命令を受けます。

留意点: 

この「両極」の間には広いグレーゾーンがあり、年金保険の調査官や社会裁判所の裁判官は、全体的な状況を見て判断します。焦点となるのは「事業上の意思決定の自由」と「事業リスク」です。

判断基準 :

個々のケースでは総合的な事情が重要ですが、典型的には次の点が判断基準となります:

  • 指揮命令従属性:発注者が業務の時間、場所、内容を具体的に指示しているか?
  • 組織への組み込み:受注者は発注者の資源を利用しているのか、自前の資源を使っているのか?また発注者の組織にどの程度組み込まれているか?
  • 事業リスク:受注者自身が経済的リスクを負っているか?

留意点: 

特に、受注者が従業員と同じ業務を行っている場合、あるいは以前に従業員として同じ会社で働いていた場合には、裁判所は偽装自営業と判断しやすくなります。加えて、受注者が自分自身で従業員を雇っていない場合は、偽装とみなされる可能性がさらに高まります。

要点: 

契約は形式的に正しく整備すべきですが、偽装自営業かどうかは契約書の名称ではなく、その実際の運用に基づいて判断されます。

偽装自営業の結果

最大の問題は社会保険料の負担義務であり、発注者にとって深刻な結果をもたらします。原則として「就労開始時」から適用され、後から判明した場合でも遡及します。これにより、多額の追徴金や延滞金、さらには刑事罰につながる可能性があります。

身分確認

被用者か自営業者かの法的確実性を得られるのは、**身分確認手続(SGB IV §7a)**だけです。これは発注者・受注者のいずれからでも申請可能です。

実務上のヒント: 

契約開始時だけでなく、長期的な業務関係においても状況が変化する可能性があるため、定期的に法的に見直すことが重要です。

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