- 個人事業主から有限会社への分社化に伴う不動産譲渡税の優遇措置
- 車両のプライベート使用の蓋然性に基づく証明
- フィットネススタジオの会員費に関する所得税法上の取り扱い
- 事業承継目的の会社持分の無償譲渡に対する給与所得課税の是非
- 個人事業主から有限会社への分社化に伴う不動産譲渡税の優遇措置
個人事業主が事業用不動産を含む事業を新たに設立した有限会社に分社化(スピンオフ)する場合、この手続きは不動産譲渡税における「企業グループ条項」により税優遇の対象となり得ると、ドイツ連邦財務裁判所(BFH)は判断しました。ただし、5年間の保有継続期間に注意が必要です。
背景
いわゆる「企業グループ条項」(不動産譲渡税法第6a条)では、一定の企業再編行為が、一定の事前・事後の持株期間を満たす場合に限り、不動産譲渡税が免除されます。裁判所では、どのようなケースがこの免税の適用対象となるか、また、どのような場合に期間の遵守が免除されるかが度々争点となっています。以下はその一例です。
事案の概要
2018年、ある個人事業主が、新たに設立した有限会社(GmbH)に対して、国内の事業用不動産を含む事業を分社化により移転しました。このGmbHの持分はすべてその個人事業主が保有していました。
これに対し、税務署はGmbHに不動産譲渡税を課しました。しかし、GmbHは企業グループ条項に基づく免税を主張し、連邦財務裁判所はその主張を認めました。
不動産の所有権がGmbHに移転されたため、形式的には不動産譲渡税の課税対象ですが、この所有権移転は企業グループ条項の範囲に該当するため免税となります。ただし、このGmbHは分社化により新設されたため、個人事業主が「設立の5年前から95%以上の持分を保有していた」という要件を満たすことは物理的に不可能でした。しかしながら、この「5年間の事前持株要件」を連邦財務裁判所は「問題なし」と判断しました。
なお、元個人事業主(=現在のGmbHの単独持分所有者)は、今後5年間にわたり95%以上の持分を保有し続ける必要があります。そうしない場合、免税が取り消され、不動産譲渡税が遡って課されます。
ポイント
この判決は、連邦財務裁判所がこれまで示してきた見解を改めて確認するものであり、以下の点が重要です:
- 5年間の事前・事後保有要件は、組織再編の事情によりそもそも満たすことが不可能な場合(たとえば、合併によって新設または消滅する場合)は免除されます。
- ただし、すべての個人事業からGmbHへの移行が免税となるわけではありません。
- 免税の対象となるのは、「新設のための分社化(Umwandlungsgesetz §123 Abs. 3 Nr. 2に基づくもの)」に限られます。
- 一方で、GmbHの持分を対価として個人事業を出資(現物出資)する形で移転する場合は、今後も不動産譲渡税の課税対象です。
- 車両のプライベート使用の蓋然性に基づく証明
プライベートでも使用可能な車両は、「プライベートで使用されている」と推定されます。この蓋然性に基づく証明を覆すには、説得力のある詳細な反証が必要です。連邦財務裁判所(BFH)は最近の判決において、この反証に必要な要件を示しました。
背景
税務署は「一般的な生活習慣」に基づき、プライベート使用可能な車両は実際にプライベートでも使用されているとみなします。しかし、すべての反論がその推定を覆すのに十分であるとは限らないことを、以下の事例が示しています。
事案の概要
ある個人事業主は、1台の社用車(この車については1%課税ルールにより私的使用を申告)と、ピックアップトラック(業務用資産として計上し、私的使用はないと主張)を保有していました。このピックアップについては運行記録簿(Fahrtenbuch)を作成していませんでした。
なお、当該個人事業主は子どもたちが使用するための小型車を複数台所有していました。税務署はピックアップトラックについてもプライベートで使用しているとみなして課税しました。納税者は異議申し立てを行い、地方財務裁判所はこれを業務専用車両と判断いました。しかし税務署はこれを不服として上告し、連邦財務裁判所は税務署側の主張を認めました。裁判所は、納税者が示した反証が「プライベート使用の蓋然性を反証するに足るものではなかった」と判断しています。
連邦財務裁判所の判断
以下のような反証は、プライベート使用を否定するには不十分とされました:
- 「ピックアップトラックは家族には大きすぎる」という主張に対し、裁判所は「ピックアップトラックはミニバン程度のサイズであり、ミニバンは多くの家庭でプライベート車両として利用されている」と指摘。
- 「人と物を両方運べる車(例:ステーションワゴン)」であっても、私的使用の推定は適用される。
- ピックアップトラックに企業の広告シールが貼られていたとしても、プライベート使用の可能性を否定するものではない。
- 「仕事に行くのに車は必要ない」「プライベートで使う時間もない」という主張も退けられた。
- 決定的な事由として、「個人事業主には他にプライベート使用の車両が無かった」という点である。
- フィットネススタジオの会員費に関する所得税法上の取り扱い
フィットネススタジオの会員費用は、納税者にとって必然的に発生する支出とはいえないため、所得税法第33条に基づく「特別な負担(außergewöhnliche Belastung)」としては認められません。
これは、医師の処方による機能回復訓練への参加が、そのフィットネススタジオの会員であることを条件としていた場合でも同様です。
事案の概要
納税者に対して、水中体操による機能訓練が医師から処方されました。こうした訓練は、資格を有するスタッフを雇用する複数の運営者によって提供されています。納税者は、自身にとってアクセスの良い場所にあるフィットネススタジオでコースを実施していたリハビリ団体を選択しました。
このコースに参加するには、機能訓練にかかる費用、リハビリ団体の会員費、そしてフィットネススタジオの会員費が必要でした。
なお、フィットネススタジオの会員になることで、水泳施設やサウナ、その他のクラスへの参加も可能になっていました。健康保険は、機能訓練のコース料金のみを保険金支給対象としました。
所得税の申告において、税務署はリハビリ団体の会員費のみを病気関連の費用(=特別な負担)として認め、フィットネススタジオの会員費は認めませんでした。
この判断に対する異議申し立ておよび訴訟は、いずれも却下されました。
判決の内容
連邦財務裁判所(BFH)は上訴を棄却しました。同裁判所は、フィットネススタジオの会員費は、基本的に「病気に起因してやむを得ず発生した費用」としては扱えないと判断しました。
なぜなら、フィットネススタジオの利用は、健康な人々でも健康維持・心身の充実向上・余暇活動の一環として利用するものであり、一般的な消費行動の範疇だからです。
さらに、機能訓練を受けるためにスタジオの会員にならざるを得なかったという事情があっても、それはあくまで自らの選択による消費行動に基づくものであり、税務上の「強制的支出」としての要件を満たさないとされました。
また、フィットネススタジオの会員になることで、医療的訓練以外の利用(例:サウナや水泳、他のクラス)も可能になったことも、会費の控除を否定する理由の一つとされました。仮に実際にそれらを利用していなかったとしても、利用可能な状態であったことが重要視されました。
- 事業承継目的の会社持分の無償譲渡に対する給与所得課税の是非
企業が事業承継を目的として幹部社員に会社の持分を無償で譲渡した場合、それが直ちに給与所得に該当するとは限らない。これは、連邦財務裁判所(BFH)が2024年11月20日に下した判断です。
事案の概要
原告Kは、2014年当時、A-GmbHに長年にわたり管理職として勤務していました。2013年、GmbHの創業株主であるA氏およびB氏は、2014年1月1日付でKおよび他の4名の幹部社員に、それぞれ5.08%ずつ、合計25.4%の有限会社(GmbH)の持分を譲渡しました。残りの74.6%は、彼らの息子Sに譲渡されました。
譲渡前の株主総会では、この持分譲渡は事業承継の一環であることが確認されました。Kおよび他の幹部社員は、経営陣交代後も企業を主導していくべきであり、息子S単独による経営では、経験不足により経営の安定が見込めず、これまで経営に関与していた幹部の関与が、将来の成功に不可欠とされました。
雇用継続とは無関係な譲渡
ポイント:これらの持分譲渡は、雇用契約の継続を条件とするものではありませんでした。唯一の条件は、相続税法(ErbStG)§§13a、13b、19aによる税制優遇が認められない場合や、税制上不利に変更があった場合には、譲渡元が持分の返還を求める権利を有するという「返還条項」でした。
税務署は、この持分取得を給与所得(雇用関係に基づく金銭的利益)とみなし課税しましたが、ザクセン=アンハルト州税務裁判所(2022年4月27日、3 K 161/21)は原告の訴えを認めました。
判決の理由
BFHは、このGmbH持分の贈与による利益はKの給与所得に該当しないと判断しました。
給与所得とは、「雇用関係に基づき」提供される金銭的利益を指しますが、ここでは譲渡が雇用関係以外の法的関係や目的に基づくものであると判断されました。仮に譲渡が勤務と関連していたとしても、動機の中心は事業承継であり、これが譲渡の決定的な理由であったと明示されています。
さらに、持分譲渡は雇用の継続とは無関係であり、贈与額は給与水準と比較して異常に高額でした。また、異なる勤続年数・給与にもかかわらず、幹部全員が同じ割合の持分を受け取っていることも、報酬目的とは考えにくいとされました。
実務上の重要性
BFHは本件が、2004年12月30日のBFH決定(VI B 67/03)とは明確に異なると指摘しています。後者では、譲渡された役員権が、受贈者の将来的な能力の検証と業績に基づいており、実質的に報酬としての性質を持つとされました。
本件では、すでに長年企業に勤務していた幹部に、事業承継の一環として持分が譲渡されたため、給与所得ではなく贈与とみなすのが妥当とされました。これは、相続税法に基づく事業承継の促進とも合致する判断です。
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