リース会計基準

日本の会計基準をつくる企業会計基準委員会(ASBJ)が9月13日に「リース取引に関する会計基準」(以下「新リース会計基準」)を公表しました。適用時期は、「2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用」になります。これは、国際会計基準(IFRS)や米国会計基準ではすでに導入されている「リース取引」に関する会計ルールを日本でも義務づけるものです。

新リース会計基準は、国際会計基準(IFRS16)と整合性を取るため、新たにリースの定義を行うところからスタートしており一読しただけでは内容を理解することは難しい基準となっています。

ここでは、あまり定義にこだわらず(そのため正確性には欠けますが)概要をお話させていただきます。

現行のリース会計基準においては、ファイナンスリース(注1)のみが、資産及び負債への計上が求められています。

現行のリース会計との大きな違いは、ファイナンスリースだけではなく、オペレーティングリース(注2)も含めて資産および負債への計上が求められるということです。これは、契約がリースを含むか否かの判断にあたって「特定の資産について使用を支配する権利を有しているか」によって判断するためです。すなわち、期間が税務の減価償却期間よりも大幅に短かった場合や、フルペイアウト(注3)ではない契約であっても、一定の期間資産を使用する権利があるのであれば、リース契約が存在するのであるから、その権利を資産として計上し、支払い義務を負債として認識しようとする考え方です。資産側には「使用権資産」、負債側には「リース負債」を計上します。また、損益計算書上でも現行のオペレーティングリースでリース料として費用計上していた額も、減価償却費と支払利息に区分して費用処理することになります。

さらに、現行リース会計基準ではリース取引とされなかった「不動産賃貸借取引」についても新リース会計基準のもとではリース取引とされる可能性があります。資産・負債が増えるので自己資本比率や総資産利益率(ROA)といった経営指標に大きな影響が出ます。 また、リースの使用権資産は、減損損失の検討を行うべき対象資産となります。

これまでのリース取引にかかわる会計処理に比べると、対象の契約数が一気に増加し、会計処理の件数が数倍増えると予想されます。企業は対応検討を早く終わらせて、業務プロセスの変更やシステム対応を行う必要があります。

注1 ファイナンスリースとは、リース料の総額が、物件の取得価格及び金利相当の合計とほぼ同額になるため、実質的には分割払いで物件を購入するのと同じとみなせるリース方式であり、リース期間終了後に物件の所有権が借り手に移転する場合があるリース方式です。(所有権が移転しない場合もあります。)

注2 オペレーティングリースは、リース期間終了後に物件を返却するリース方式です。リース料は、物件の取得価格よりも低くなり、支払額が抑えられます。

注フルペイアウトのリース取引とは、借手が、リース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいいます。リース物件の取得価額相当額のほか、維持管理費等トを借手が実質的に負担するリース取引をいいます。

企業会計基準第34号 「リースに関する会計基準」等の公表|企業会計基準委員会 (asb-j.jp)

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