- 在宅勤務による所得控除の適用方法
- 育児手当受給資格の所得上限が年間20万ユーロに低下
- 児童手当は6ヶ月分のみ遡及支給
- 株主兼社長の未払賞与に対する賃金税
- 在宅勤務による所得控除の適用方法
在宅勤務は通勤時間を節約できるだけでなく、節税にもなります。2023年以降、在宅勤務の場合、従業員は所得税申告において年間1,260ユーロまでの所得控除が可能になっています。
この1日あたり6ユーロの所得控除は、自宅のキッチンテーブルで仕事をした場合でも、年間210日まで申請できます。ただし、一日の勤務時間の半分以上を在宅勤務で過ごし、自宅以外の主な勤務場所にて勤務しない日に限られます。この条件を満たせば、その間に自宅を離れて外出先でのアポイントメントに出席することもできます。例えば、ある従業員が5時間自宅で仕事をし、午後に2時間外出先で商談をした場合でも、6ユーロの所得控除を受けることができます。
また、社外での打ち合わせには1キロメートルあたり30セントの所得控除が適用されますが、その会議が会社(=主な勤務地)で開催された場合には対象外となります。代わりに、会社までの通勤費相当の所得控除として20㎞までは1㎞あたり30セント、21㎞以降は1㎞あたり38セントが適用できますが、会社以外での社外の会議の場合と比較すると片道相当分のみになります。
代替勤務先がない職種(教員や現場スタッフなど)は、1日に短時間だけ自宅で勤務し、残りの時間は主な勤務先(学校など)で勤務した場合でも、在宅勤務による所得控除と通勤費相当の所得控除の両方を適用することができます。
2023年以降、自宅に独立したホームオフィスを持つ従業員は、すべての業務および専門的活動の中心が自宅である場合に限り、部屋代の実費(日割り家賃、付随費用、減価償却費など)を所得控除することができます。このようにホームオフィスが「活動の中心地」である場合、年間1,260ユーロをホームオフィス費用として一括で所得控除の対象とすることができます。
- 育児手当受給資格の所得上限が年間20万ユーロに低下
ドイツでは2023年に180万人弱が育児手当を受給しています。連邦統計局によると、このうち130万人が女性で、平均14.8カ月の育児休暇を取得しました。一方で男性は平均3.7カ月しか育児休暇を取得していません。
2024年4月1日以降の出産について、育児手当を受けるための所得基準が引き下げられ、課税所得が年間20万ユーロ以下の夫婦と一人親の場合にのみ、育児手当が支給されるようになりました。なお、以前は、夫婦で30万ユーロ、一人親で25万ユーロが上限値として設定されていました。
2025年4月1日以降の出産については、所得制限はさらに下がり、17. 5万ユーロとなります。出産前1年間の親の平均純所得が高いほど、より多くの育児手当が支給されますが、月額最低額は300ユーロ、最高額は1,800ユーロと定められています。
出産を控えた親は、早い段階で賃金税クラスを変更することで、事前に育児手当の支給額に意図的に影響を与えることができます。出産後も家庭に残り、育児を行う親は、出産休暇取得の少なくとも7カ月前、可能であれば出産年度の早い時期に、課税クラスを5から3に変更することで、育児手当の計算基礎となる手取給与額を増やすことができ、その結果、育児手当もそれに応じて増加することになります。
しかし、もう一方の親が一定期間後に育児を引き継いだ場合、その親の育児手当の額は、以前の手取給与額に基づいて計算されるため注意が必要です。もしその親の賃金税クラスが5であった場合、税額控除が多いため給与手取額が少なくなり、育児手当の計算が不利になる恐れがあります。従って、これから親になる人は、最終的にどの税区分の組み合わせが自分にとって最も有利になるかを事前に確認しておく必要があるといえます。
- 児童手当は6ヶ月分のみ遡及支給
2019年7月18日以降、児童手当は申請前の6ヶ月間のみ遡及して支給されるようになっており、連邦財政裁判所はこれを合法としています。しかし、児童手当の受給資格としてはそれ以前の期間にも依然として適用され、高所得者にとっては児童扶養に係る税額控除が可能となります。
児童手当は、家族手当事務局が申請を受理した月の初めから遡って過去6カ月分のみ支給されます(所得税法(EStG)第70条第1項2および第52条第50項1)。連邦財政裁判所は、2019年7月18日以降に提出された申請書が2019年7月18日以前の期間に関するものである場合も同様の支給制限が適用されるとの判決を下しています。
2019年8月5日、請求者は2018年8月から2019年10月までの期間の児童手当を申請しました。2020年5月7日付の決定で、家族手当事務所は申請された児童手当を決定しました。請求人は異議申立ての中で、2019年7月18日以前の児童手当受給期間については、たとえ申請書の提出がこの期限後であったとしても、6ヶ月の支給制限が適用されるべきではないと主張しました。家族手当事務局と税務裁判所はこれを却下し、申請の対象期間が2019年7月18日以前であったとしても、同日以降の申請の期限は合法的であるとの判決を下しています。なお、最終的に連邦財政裁判所もこれを認めています。
児童扶養に係る税額控除の方が所得税評価に有利な影響を与えるほど収入が多い人の場合、児童手当の受給資格(支給がなくても)だけで税額控除が十分可能な場合があります(EStG第31条第5文)。ただし、児童手当を申請する必要があることには留意が必要です。
- 株主兼社長の未払賞与に対する賃金税
契約により合意された賞与は、実際に支払われていなくても税務上は受領されたとみなされることがあります。連邦財務裁判所の判決は、賞与が支払われた後の放棄は「遅すぎる」、すなわち未払賞与の課税につながる可能性があることを示しています。
背景
賞与は、受け取った時点でその他の報酬として賃金の一部となります(所得税法第38a条(1)第3文)。たとえ給与を放棄し、実際に受取りがなかったとしても課税されることがあります。連邦財政裁判所は、このようなケースについて再び判断を下しました。
事実関係
あるGmbHの単独株主兼社長は、月給に加え、マネジメント契約に基づき年間利益の20%の賞与を受け取る権利がありました。賞与の支払期限は年次財務諸表が作成された1カ月後とされていましたが、2015年から2017年までに支払実績はありませんでした。GmbHの財務諸表では、未払賞与は認識されておらず、所得税申告書においても単独株主兼社長への賞与の支給は無く給与支給のみとして申告されていました。しかしながらGmbHの賃金税の税務調査において指摘され、賞与について課税がなされました。個人株主兼社長は自ら賞与の支給額を決定することができたため、賞与は貸借対照表作成時点に受け取ったものとみなされたのです。
税務裁判所は、未払賞与を債務として計上していないことから、GmbHの法人所得の減少につながらないため、賞与について課税対象にはならないことを支持しました。税務当局は控訴し、連邦財政裁判所は、租税裁判所の判決を取り消し、本件を租税裁判所に差し戻しました。税務裁判所は今後、賞与の放棄がGmbHへの隠れた貢献と(Hidden Contribution)になったかどうかを調査することになります。連邦財政裁判所は、GmbHの財務諸表に対応する負債が認識されているかどうかは重要ではないという税務当局の見解には同意していません。
留意点:給与を放棄した日がいつであるかが、給与の支給があったとみなされるかどうかについて決定的な判断要素となります。給与の受取とみなされる隠れた貢献は、唯一の株主である社長が、給与または賞与の受給権をその確定後に放棄した場合にのみ発生します。確定前に放棄すれば、無償の労働となり、隠れた貢献による賃金の受け取りとみなされることはありません。
実務上のアドバイス:個人株主兼社長は、適切な時期に行動すれば安全です。給与を支払わない場合は、決算日までに明確な意思表示をすることをお勧めします。給与の支給について争いがなく、支払期日が到来すれば、受け取ったものとみなされます。
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