中規模法人のための移転価格セミナー

※以下は、上記セミナー全11回のうち第6回を掲載しています。

(第6回)取引単位営業利益法

 

1.取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method :TNMM)とは

 

取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method :TNMM)とは、国外関連取引から得られる営業利益の水準に着目して国外関連取引に係る独立企業間価格を算定する方法をいい、平成16年度税制改正により導入されました。

棚卸資産等の厳格な同種性が要求される独立価格比準法や、売手又は買手の果たす機能等の類似性が要求される再販売価格基準法及び原価基準法に比べて、取引単位営業利益法が用いる営業利益率はそれらの要素(機能等)の差異によって影響を受けにくいとされています。

企業単位の事業において比較対象取引を行う法人(以下「比較対象法人」といいます。)が果たす機能と国外関連取引の一方の当事者が果たす機能との類似性が高く、利益水準指標(PLI)の算定に影響を及ぼすことが客観的に明らかな機能の差異が認めらない場合であれば、当該一方当事者が行う国外関連取引に係る事業を一の取引とみなして比較対象法人の選定を行うことができます。実務では企業データベースから複数の比較対象法人を選定し、それらの企業の営業利益率から独立企業間価格で取引した場合の営業利益率の幅(レンジ)を算定することとしています。

《第4回》で説明しましたが、取引単位営業利益法においては利益水準指標(PLI)として売上高営業利益率、総費用営業利益率及びベリー比(営業費用売上総利益率)があります。

 

2.利益水準指標:売上高営業利益率

 

国外関連取引に係る棚卸資産等の買手(購入者側)の適正な営業利益の額を比較対象取引に係る売上高営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)を用いて計算し、当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定する方法です。

この方法は、使用した資産や引き受けたリスクを考慮して、国外関連取引に係る棚卸資産 等の買手が果たした機能の価値が、売上との間に関係があると認められる場合(例えば、再販売会社を検証する場合)に適切な方法とされています。

国税庁移転価格参考事例集【事例6】(取引単位営業利益法を用いる場合)においては、下図の取引(図の比較対象法人は筆者が追加)において、S社は、独自性のある広告宣伝・販売促進活動を行っていないが、自らの販売計画に従ってP社から購入した製品Aを、一定の在庫を保有して管理し、X国において再販売している旨の前提を置いた上で、比較対象法人の売上高営業利益率が独立企業間価格で取引した場合のS社の売上高営業利益率になるとしています。

利益水準指標:売上高営業利益率

〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例6】をアレンジ〕

 

3.利益水準指標:総費用営業利益率

 

国外関連取引に係る棚卸資産等の売手(販売者側)の適正な営業利益の額を比較対象取引に係る総費用営業利益率(総費用に対する営業利益の割合)を用いて計算し、当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定する方法です。

この方法は、使用した資産や引き受けたリスクを考慮して、国外関連取引に係る棚卸資産等の売手が、営業費用に反映されない機能(製造機能等)を有していると認められる場合(例えば、製造販売会社を検証する場合)に適切な方法とされています。

利益水準指標が総費用営業利益率である場合の取引単位営業利益法については国税庁移転価格参考事例集には掲載されていませんが、【事例6】を参考に筆者が作成した下図の取引において、S社は、独自性のある製造活動は行っていないが、自らの製造計画に従って原材料を購入して製品Aを製造し、一定の在庫を保有して管理し、P社に販売している等を前提とすれば、比較対象法人の総費用営業利益率が独立企業間価格で取引した場合のS社の総費用営業利益率になります。

利益水準指標:総費用営業利益率

〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例6】を参考に作成〕

 

4.利益水準指標:ベリー比(営業費用売上総利益率)

 

国外関連取引に係る棚卸資産等の買手(購入者側)又は売手(販売者側)の適正な売上総利益の額を比較対象取引に係るベリー比(営業費用に対する売上総利益の比:営業費用100に対して売上総利益が125の場合のベリー比は1.25と表示)を用いて計算し、当該国外関連取引に係る独立企業間価格を算定する方法です。

この方法は、使用した資産や引き受けたリスクを考慮して、国外関連取引に係る棚卸資産 等の買手又は売手が果たした機能の価値が、①営業費用との間に関係があると認められ、② 販売された製品の価値によって重要な影響を受けておらず、売上との間に関係がないと認められ、③営業費用に反映されない機能(製造機能等)を有していないと認められる場合(例えば、仲介業者や単純な役務提供業者を検証する場合)に適切な方法です。

国税庁移転価格参考事例集【事例6】(取引単位営業利益法を用いる場合)においては、下図(上記2のと同じ図)の取引において、S社は、X国において、独自性のある広告宣伝・販売促進活動を行っておらず、P社の販売計画に従って同社から製品Aを購入し、第三者である代理店に販売している(製品Aは、商流上S社を経由して第三者の代理店に販売されているが、物流上はS社を経由せず、直接P社から当該代理店に引き渡されている。)旨の前提を置いた上で、比較対象法人のベリー比が独立企業間価格で取引した場合のS社のベリー比になるとしています。

利益水準指標:ベリー比(営業費用売上総利益率)

〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例6】をアレンジ〕

 

以上

 

※《中規模法人のための移転価格セミナー》の次回掲載は来月の予定です。

本セミナーおよび移転価格に関するご質問・ご要望は、HLSグローバルJapan@HLS-Global.jpまでお問い合わせください。

注目記事

HLSの専門家が定期発信する記事です。日本進出や国際税務、会計、移転価格をはじめ、グローバル・ビジネスに携わる皆様のお役に立つ情報をわかりやすく解説しています。

hls-global-accounting-firm-logohls-map-blue2

お問い合わせ

HLSのパンフレット

HLSグローバルのサービスや事務所所在地などにつき、わかりやすくご案内いたします。

HLSグローバルをLinkedInでフォロー

Copyright © 2017 Hotta Liesenberg Saito LLP | 免責事項 | プライバシーポリシー