※以下は、上記セミナー全11回のうち第5回を掲載しています。
(第5回)基本3法
基本3法は、租税措置法第66条の4第2項第1号イ~ハに規定されており、国税庁移転価格参考事例集においても、【事例1】~【事例3】に掲げられています。以下では事例についても紹介しますが、省略している部分がありますので、詳しくは原典を参照してください。
1.独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method :CUP法)
特殊の関係にない売手と買手が、国外関連取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を当該国外関連取引と取引段階、取引数量その他が同様の状況の下で売買した取引の対価の額に相当する金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいいます。棚卸資産の性状、構造、機能等の差異の影響を受けやすいとされています。
基本的には「同種」の製品に係る比較対象取引を選定することになります。
国税庁移転価格参考事例集【事例1】(独立価格比準法を用いる場合)においては、下図の取引において、製品Bは製品AとP社内における製品区分(型番)は異なるが、性状、構造、機能等の面で同様の製品であり、両取引については、取引段階は同じであり、取引規模もおおむね同様である旨の前提を置いた上で、P社とT社間の製品Bの取引が比較対象取引になるとしています。なお、P社とS社間の取引についてP社と第三者間の取引を比較対象取引とする場合、内部比較対象取引といいます。
〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例1】〕
2.再販売価格基準法(Resale Price Method :RP法)
国外関連取引に係る棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額から通常の利潤の額を控除して計算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法をいいます。棚卸資産の性状、構造、機能等の差異の影響は受けにくいが、当事者が果たす機能の差異の影響を受けやすいとされています。
基本的には製品そのものの利益率(売上総利益率)が類似する比較対象取引を選定することになります。
国税庁移転価格参考事例集【事例2】(再販売価格基準法を用いる場合)においては、下図の取引において、T社は第三者である外国メーカーから輸入した製品を日本国内の第三者の代理店に販売する再販売業者であり、それ以外の事業は行っておらず、T社の取扱製品Bは、製品Aと性状、構造及び機能等において同種ではないが類似性が高く、T社は売上規模や取引段階、販売機能(広告宣伝、販売促進、アフターサービス等)の面でもS社とおおむね同様である旨の前提を置いた上で、P社とT社が製品Bを第三者から仕入れる取引が比較対象取引になるとしています。
〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例2】〕
3.原価基準法(Cost Plus Method :CP法)
国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得の原価の額に通常の利潤の額を加算して計算した金額をもつて当該国外関連取引の対価の額とする方法をいいます。棚卸資産の性状、構造、機能等の差異の影響は受けにくいが、当事者が果たす機能の差異の影響を受けやすいとされています。
基本的には製品そのものの利益率(原価に対する売上総利益の割合)が類似する比較対象取引を選定することになります。
国税庁移転価格参考事例集【事例3】(原価基準法を用いる場合)においては、下図の取引において、製品Bは製品Aと同種の製品ではないが、性状、構造、機能等の面で類似しており、両取引の販売数量はおおむね同じであり、両取引の契約条件(引渡条件、決済条件、製品保証、返品条件等)は、取引価格を除き同様である旨の前提を置いた上で、P社とT社間の製品Bの取引が比較対象取引になるとしています。
〔出典:国税庁「移転価格税制の適用に当たっての参考事例集」【事例3】〕
以上
※《中規模法人のための移転価格セミナー》の次回掲載は来月の予定です。
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