中規模法人のための移転価格セミナー

※以下は、上記セミナー全11回のうち第4回を掲載しています。

(第4回)独立企業間価格の算定方法

 

1.OECD移転価格ガイドラインに沿った算定方法

例えば、親子会社間の国外関連取引について親会社に移転価格課税がされた場合、親会社において増加した所得は子会社において減額されるべきですが、子会社の所在地国において同様の移転価格税制がない場合、子会社において所得の減額が行われず、二重課税が生じてしまいます。このような事態を避けるためには、移転価格税制について世界共通ルールがあることが望ましく、OECD移転価格ガイドラインがその役割を果たしています。

日本の移転価格税制は、OECD移転価格ガイドラインに沿ったものとなっており、独立企業間価格の算定方法についても、OECD移転価格ガイドラインにおいて国際的に認められた方法となっており、次の方法が法定されています。

なお、平成23年度税制改正前は、基本3法が優先適用され、基本3法が適用できない場合にその他の方法を適用することとされていましたが、平成23年度税制改正後は最適な方法を採用することとされ、優先順位はなくなりました。

2.基本3法

基本3法とは、「独立価格比準法(CUP法)」、「再販売価格基準法(RP法)」及び「原価基準法(CP法)」をいいます。詳しくは次回(第5回)に説明しますが、非関連者間又は法人と非関連者との間で売買されている商品・製品に着目し、同種の商品・製品が取引されていればそれを比較対象取引としてその価格を独立企業間価格とするというのが「独立価格比準法」であり、同種の商品・製品は取引されていないが、類似の商品・製品が取引されている場合にそれを比較対象取引とし、非関連者に対する販売価格から比較対象取引の売上総利益の水準をマイナスして仕入に係る独立企業間価格を算定するのが「再販売価格基準法」、非関連者からの仕入価格に比較対象取引の売上総利益の水準をプラスして売上に係る独立企業間価格を算定するのが「原価基準法」となります。

独立価格比準法は最も移転価格税制の考え方を忠実に反映した方法であり、再販売価格基準法及び原価基準法は次いで移転価格税制の考え方を忠実に反映した方法とされています。しかしながら、移転価格の実務においては、比較対象取引について課税当局及び法人双方において検証可能な公開情報から探すことが求められるところ、基本3法においては、比較対象取引において厳格な同種性、類似性が求められるため、公開情報からは見つけにくいという問題があります。

3.その他の方法

取引単位営業利益法(TNMM)

現在、独立企業間価格の算定方法として最も多く使用されているのが「取引単位営業利益法」です。詳しくは第6回で説明しますが、国外関連取引を行う一方の当事者における国外関連取引に係る営業利益の水準に着目するもので、独立企業間価格で取引を行った場合の営業利益率は、公開情報から選定した比較対象取引を行う企業数社の営業利益率のレンジに収まるとするものです。何に対する営業利益の水準を算定するか(これを「利益水準指標(profit level indicator :PLI)」といいます。)により、売上高に対する営業利益の水準に着目する「売上高営業利益法」、原価と販管費の合計額(=総費用)に対する営業利益の水準に着目する「総費用営業利益法」、営業費用に対する売上総利益の水準に着目する「ベリー比(営業費用売上総利益率)」があります。

利益分割法(Profit Sprit Method:PS法)

詳しくは第7回で説明しますが、利益分割法は、国外関連取引に係る合算利益を一定の方法により取引当事者間で分割する方法で、「比較利益分割法」、「寄与度利益分割法」及び「残余利益分割法」があります。利益分割法は、取引当事者双方が無形資産等の独自の機能を有している場合など比較対象取引が見つからない場合に有用な方法とされており、利益分割に比較対象企業の分割割合を用いる比較利益分割法は実務上は適用されている例は見当たりません。寄与度利益分割法と残余利益分割法は、国外関連取引により生じた合算利益を分割対象利益とし、その発生に寄与した程度を推測するに足りる取引当事者に係る要因(以下「分割要因」といいます。)に応じて取引当事者間に配分することにより独立企業間価格を算定する方法ですが、前者は合算利益の総額を分割対象利益とするのに対し、後者は、まず両当事者が無形資産等の独自の機能を有しない場合に得るであろう利益(比較対象取引に係る利益:「基本的利益」といいます。)を分配し、残余の利益を分割対象利益とするものです。

以上

※《中規模法人のための移転価格セミナー》の次回掲載は来月の予定です。

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